自衛隊もテポドン2号を迎撃

2009.3.3



 浜田防衛相が「ロケットであっても制御を失って、わが国に落下する可能性があるとすれば、それに対処するのは当然だ」と述べたと読売新聞が報じました。

 この発言を聞いて、「それなら安心だ」と思った人がいるかも知れません。しかし、ロケットの常識から考えて、テポドン2号が故障によって日本国内に落下する可能性はもともと低いと言えます。

 2003年のスペースシャトル「コロンビア号」の事故は、高度約62km、速度マッハ18.3で発生し、地上に多くの残骸を落下させましたが、大きな被害は出ませんでした。大規模な事故は、発射直後に墜落した場合に起きています。有名なところでは、中国の長征ロケットが打ち上げ直後に市街地に墜落した事故で、500人以上が死亡したとされ、宇宙開発史上最大の事故といわれています。舞水端里から日本列島までの距離を考えると、テポドン2号はコロンビア号の遥か上空を飛び、一番大きい1段機体はすでに切り離されているため、たとえ墜落しても、地表に落下する前に大半は燃え尽き、大きな被害は出ないでしょう。テポドン2号の軌道は下北半島付近を通ることもあり、該当地域の面積が小さいことも被害が出にくい理由となります。

 迎撃ミサイルは一般的なイメージからかなりかけ離れています。命中すると爆発して目標を木っ端微塵にするのではなく、直撃することで機能不全にしたり、破壊することを狙っています。PAC3の場合、迎撃高度が20km以下ということですから、仮にテポドン2号が分解しないまま落下してきた場合で命中させた場合、やはり地上には残骸が落下すると考えられます。逆に言うと、こういう場合は迎撃しない方が被害は少ないかも知れません。いずれにしても、分解しないテポドン2号が落下する可能性が小さいので、PAC3の出番はなさそうです。また、テポドン2号がいくつかに分解した場合、SM3やPAC3はうまく迎撃できるのかも疑問です。北朝鮮のロケット打ち上げは実験ですが、日本のミサイル迎撃もまた実験だと言えます。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.