オバマ大統領がロシア大統領に書簡

2009.3.4



 ニューヨークタイムスによれば、オバマ大統領はロシアのメドベージェフ大統領に秘密の書簡を送り、イランの核兵器開発を阻止するのを助けるのなら、東ヨーロッパへの迎撃ミサイル配備を中止すると申し出ました。

 この手紙は3週間前に、政権トップによりモスクワで直接メドベージェフ大統領に手渡されました。この手紙はメドベージェフ大統領がオバマ大統領が選挙に当選した直後に送った手紙に対する返信とのことです。また、この手紙には、今年期限が切れる戦略兵器削減条約の延長についての協議とアフガニスタンへの補給ルートを開くことでの協力について論じていたと言います。ただし、手紙には具体的な提案や相互に拘束力のある提案は含まれていませんでした。

 オバマ大統領は、まずコンセプトを提案して、議論はこれからということのようです。コンセプトを示し、具体的な内容は後で決めるのがオバマ大統領のやり方で、大統領選挙の際にも、具体的な約束はほとんどしていないと言われていました。しかし、ロシアにとっては悪くない話で、メドベージェフ大統領は提案を前向きに検討するでしょう。すでに、ロシアがこうしたがっていることは報道されていました(記事はこちら)。あとは、議論を詰める段階で、どこまで合意できるかが問題です。また、アフガンへの補給ルートの話が含まれていたということは、米軍が補給路を相当気にしていることが窺えます。今のところ、ロシアの戦略的な外交にアメリカが乗っかっている印象が強いので、下手するとロシアのペースに乗せられる危険もあります。ロシアは陰でアフガン情勢が悪化するような工作をしておいて、アメリカに救いの手を差し伸べ、自分に有利な状況を作り出すかも知れません。ロシアが国力を立て直すには、こうした環境の方が好ましく、選択しない手はありません。よって、オバマ政権が、これからどんな交渉を進めるかが重要になってきます。


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