テポドン2号そのものについては、まだ結論が出せないので、日本政府の対応について、現段階までの見解をまとめてみます。
テポドン2号発射に関する日本政府の対応について、世論は好意的に評価しているようです。しかし、私は完全に間違っていたと考えています。
テポドン2号は弾道ミサイルか?
まずは、テポドン2号を弾道ミサイルと呼んだことについて、もう一度まとめます。
おそらくは外務省の意向なのでしょうが、北朝鮮が「人工衛星ロケット『銀河2号』を打ち上げる」と発表したことを、「人工衛星ロケットを名目にした弾道ミサイルの打ち上げ」へ切り替えるため、「弾道ミサイル」という言葉を何度も用いました。マスコミにもテポドン2号を「弾道ミサイル」と呼ぶように依頼したらしく、NHKをはじめとしたすべてのメディアが、それに従いました。人工衛星ロケットという言葉が定着してしまうと、2006年の国連決議違反というシナリオが崩れると考えたのです。
しかし、これは逆効果でした。「テポドン2号は弾道ミサイルではない」という直接的な反論を北朝鮮に与えてしまったからです。さらに、中国とロシアを国連の場で味方につけるのが難しくなります。「弾道ミサイルの技術開発のための人工衛星ロケットを打ち上げることは、国連決議違反である」という筋書きを考えた方がよかったのです。北朝鮮は弾道ミサイルの開発だけをやっているのではなく、人工衛星ロケットから経済支援の要請まで、考えられることのすべてを狙っているのです。よって、今後は打ち上げの事実だけを問題にするのではなく、弾道ミサイルに直接関係する技術の存在を調査して国連決議を求めるように政策を変更する必要があります。
また、このロケット打ち上げが実験なのか、戦争行為なのかすら明確ではない表現を用いたことは、こうした問題に無知な人びとを混乱させた可能性すらあります。関東地方にも迎撃ミサイルを展開したのですから、てっきり戦争だと思った人もいたはずです。これに、日本国民は平和ボケだから、少し刺激を与えた方がよいとか、ミサイル防衛を推進するためには危機感を盛り上げた方がよいという考えがあったのなら、それは将来起こり得る核戦争に余計な混乱しかもたらさないでしょう。
賢明な人なら、今回のロケット打ち上げで、北朝鮮から発射された弾道ミサイルは7分足らずで日本に着弾することを察したはずです。こうした短時間で有効な避難を行うのならば、公共の場所に避難所が設けられるべきであり、自宅には地下シェルターを設置するのが最も有効であることに気がつくはずです。少なくとも、開発中の迎撃ミサイルよりも地下シェルターの方が効果は実証されています。北朝鮮と核戦争が起こりそうな場合、夜間は寝室ではなく、地下シェルターで眠らないと、避難は間に合わないことも理解できたはずです。日本はこのことに気がつく絶好の機会を逃しました。テポドン2号が飛び去ると、誰もが危機は去ったと考え、翌日のトップニュースは人気タレントが結核で入院した話に変わりました。しかし、真の問題は北朝鮮がどこまでロケット技術を進歩させたかであり、それはこれからの解析で明らかになるのです。
迎撃ミサイルの展開について
日本だけが迎撃ミサイルを洋上と陸上に展開しました。仮にテポドン2号が日本列島に墜落するとしても、最も多くの燃料を積んだ1段機体は切り離された後であり、2段機体の燃料も多くが使用された後か、すべて使用した後ですから、日本に対する危険はほとんどありません。関東地方にもPAC-3を配備したのは明らかにやりすぎです。おまけに、すべてのPAC-3部隊がテポドン2号の予想コースから外れた場所で、ごく一部の人口密集地域しか守っていなかった事実を報じるメディアは見られませんでした。