テポドン騒動のまとめ その2

2009.4.11



 今回は、まだ触れていない点について述べます。テポドン2号の飛行については、依然として検討中です。


打ち上げ時刻の謎

 北朝鮮はテポドン2号の打ち上げ時刻を午前11時20分としています。しかし、日本は午前11時30分としています。韓国は午前11時30分15秒と発表しています。北朝鮮がなぜ10分間ずれた時刻を発表したのかは、理由が不明です。しかし、これはデジタルグローブ社の人工衛星が上空を飛ぶ時刻と発射を一致させたことを隠すつもりなのかも知れません。もっとも、隠したところでどうにかなるものとは思えません。しかし、読売新聞が韓国のニュース専門テレビYTNの情報として報じたところでは、4日に北朝鮮がまもなく発射すると発表した後も、ロケットを追跡するレーダーが感知されなかったと韓国軍関係者が述べているといいます。このことから、最初から北朝鮮は4日にテポドン2号を発射する気はなかった可能性があります。これがデジタルグローブ社の人工衛星の上空通過と関係があるかどうかは検討する必要がありそうです。あるいは、レーダーの故障、風速の問題であるかも知れません。


テポドン2号打ち上げの映像

 人工衛星ロケットであることを強調するために白く塗られた機体には「朝鮮」を意味するハングル文字がペイントされていました。これは韓国をも含む地名です。北朝鮮としては半島統一の意思を表明したつもりでしょう。

 噴射炎は赤みがかっており、これは酸化剤に抑制赤煙硝酸を使った時にみられる色であるため、テポドン2号の酸化剤が抑制赤煙硝酸で、推進剤が非対称ジメチルヒドラジンで証拠の一つとしてあげることができます。なお、抑制赤煙硝酸が推進剤として用いられることもありますが、ロシア系の弾道ミサイルでは前記2種類の燃料が使われることが多いのです。

 加速が日本のH-2Aロケットに比べると数段遅いのが気になります。補助ブースターも持つH-2Aロケットは瞬時に加速して上昇するのに対して、テポドン2号は実にゆっくりと加速します。また、テポドン2号のペイロードは600〜1,000kgと見積もられるものの、今回搭載されたペイロードはたった30kgとされています。H-2Aロケットのペイロードは静止軌道の場合で約2,500kg、低高度軌道なら約10,000kgもあります。加速力が違うのも当然です。


誤報

 誤探知や機材の不具合などにより、数回誤報が起きたことは問題ですが、実際の戦争では珍しくないことであり、むしろこのことをメディアが報じないのが問題だと、私は考えます。正しく対応さえすれば正しく警報を出せるのだから、訓練のあり方を工夫すればよいという発想は、本物の戦争では通用しません。正しく対応しても間違った警報が出てしまうのが実戦なのです。マスコミは政府の警戒態勢は及第点だったという評価をつけたようですが、もともと、この分野には合格点は存在しないのです。警戒態勢はそれくらい厳しく評価しないといけないことを、過去の戦史は教えています。

 テポドン2号発射の報が入った時、私は秋田県の海岸で、どこかの自治体が鳴らした警報のサイレン音を聞きました。何とも場違いというか、 奇妙な印象でした。日本は戦争状態にはないのに、空襲警報が鳴ったような印象でした。毎日、各国の人工衛星がたくさん日本上空を飛んでいるのに、北朝鮮のロケットが領空の上を飛ぶのが、そんなに恐ろしいことなのでしょうか。


飛翔体

 テポドン2号が発射された途端、「弾道ミサイル」とされていたものが「飛翔体」へと変化しました。飛翔体という言葉は、2006年のテポドン2号打ち上げの際に使われた言葉だと記憶します。1998年のテポドン1号打ち上げの際には使われなかったと思いますが、記憶が定かではありません。「飛翔体」はロケット工学の世界で使われる言葉ですが、政治の世界では耳慣れません。2006年の打ち上げでは、北朝鮮にロケットを打ち上げたことを認めさせるために、慎重に飛翔体という言葉を選んだはずですが、今回は事態が明白なので不要だったと言えます。


マスコミの対応

 今回、最も危機感を煽る記事を掲載したのは産経新聞でした。論調は勇ましいのですが、相変わらず愛国的な理念だけが先行して、根底に冷静な分析がないのが問題です。記事を読み返せば分かることなので、ここで具体例は示しません。


敵地攻撃論と核武装論の再燃

 自民党の一部議員から敵地攻撃論と核武装論について発言がありました。こういう議論で常に無視されるのは、日本とアメリカ、韓国とアメリカがそれぞれ軍事同盟下にあるということです。北朝鮮が日本と韓国のいずれを攻撃しても、アメリカが参戦することを考えれば、北朝鮮が日本と韓国の片方を攻撃しても、アメリカの参戦を招くのは間違いがありません。日本を守るためにアメリカが戦争状態になれば、韓国に置かれている米軍基地も戦争状態となり、韓国軍は必然的に臨戦状態か戦争状態に置かれることになります。ところが、日本の政界で行われる議論では、常に日本が単独で北朝鮮に攻撃されることを想定します。こうした問題を考えるには、まず韓国と話をしてみるべきです。韓国軍は弾道ミサイルに対抗する部隊を準備しています。日本が似たような部隊を用意しても、韓国軍が先にミサイル発射拠点を破壊するかも知れません。北朝鮮にとって、日韓米の強力な連携が一番嫌なことは明白です。


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