ジェームズタウン財団の「ユーラシア・デイリー・モニター」のレポートによれば、ロシアが反体制派を後押しして、グルジア共和国に対する支配力を強化しようとしています。今後、グルジアで再び緊張が高まり、軍事介入が起こる可能性が高まっているとしなければなりません。
以前に私は、ロシアがグルジア内の親露派を支援し、民主的な政権交代を装った政府転覆を実行すると指摘しましたが、それが再び現実になりつつあります。これは全面的な戦争を避けながら行われる勢力の拡大であることに注意しながら観察する必要があります。
関連記事は以下のとおりです。
Georgian Government Fine-Tunes its Response to Radical Opposition Offensive（14日）
Georgia Opposition Escalates Rhetoric Amid Dwindling Numbers（14日）
Russian Forces Deploying for Possible Action in Georgia（16日）
"Nashi" Foray into Georgia Stopped in Time（17日）
記事の中からポイントをいくつか抽出してみます。
24時間以内にサーカシビリ大統領に辞職するよう求めた反政府デモは４月９日にはじまりました。同種のデモは2007年６月と11月（ロシアの介入前）にも行われており、今回、グルジア政府は最大の透明度と抑制で対応しています。デモ隊への対応について、グルジア政府は西ヨーロッパの法執行機関と治安専門家の助言を受けています。デモ隊は平和的に行動していれば、どこでも活動することが許されています。すべてのテレビニュースの編集室を視察したグルジア駐在フランス大使エリック・フルニエ（Eric Fournier）は、ジョージアが民主主義国として発展していることが証明され、すべてのチャネルが完全で客観的な映像を見せていたと結論しました。９日のデモについて、主催者は120,000〜150,000人が参加すると声明していましたが、実際に集まったのは約60,000人、10日は20,000〜25,000人、11日は10,000人以上、12日は4,000人、13日は20,000人でした。
ロシアのメドベージェフ大統領は昨年９月にイタリアのRAIテレビのインタビューで「我々にとってサーカシビリ大統領は存在しません、彼が政治的に死に体です」と述べ、今年３月のBBCのインタビューでは「我々はグルジア国民を愛し、高く評価します。我々はサーカシビリ大統領といかなる関係を持とうと思いませんし、話をする気もありません。けれど、もし民主的な過程の結果として、グルジアの権力が変化するなら、我々は論議する準備ができています。」と述べています。黒海艦隊はセバストポリを出航しました。グルジアは艦隊の派遣と地上軍の増員を批判しましたが、ロシアは型通りの演習であり、グルジアの反応をヒステリックで挑発的だと一蹴しました。現在、どれだけの地上兵力がグルジアを攻撃できる距離に配備されたかは不明ですが、派遣された海軍の規模は分かっています。それは去年８月にグルジアに介入した時よりも大きいと見られています。先週、４隻の水陸両用上陸舟艇がセバストポリを出航しましたが、昨年８月は２隻だけでした。これらの艦は海兵隊員をアブハジアに投入するために小さな漁港オチャムチラ（Ochamchira）に派遣されました。
16日、グルジア政府はロシアが組織した青年グループ「ナシ（Nashi）」が南オセチアの境界線とトビリシで事件を起こすのを阻止しました。今月10日にモスクワを出発したナシ活動家20人を載せた５台の車両「モスクワ・ツンヒバリ・トビリシ間パレード（Moscow-Tskhinvali-Tbilisi Motorcade）」は15日にロキ・トンネルを通ってツンヒバリに到着しました。彼らはトビリシへ向かうか境界線上で事件を起こすことを計画していました。15〜16日の夜間、グルジア内務省の要員は、ゴリ市（Gori）のホテルで同組織の人民委員アレクサンダー・クズネツォフ（Aleksandr Kuznetsov）を拘留し、スイス大使館に引き渡しました。クズネツォフは、グループの補給の問題で地元の組織と話し合い、トビリシに移動し、宿泊先をみつけ、反政府イベントの会場を指定する途中だったと供述しています。16日の晩までにトビリシに到着する予定がうまくいかず、彼は南オセチアとの境界線に戻り、パレードと合流しようとしました。そのパレードは特別に編成された武装した護衛に守られることになっていました。もし、グルジア警察がグルジア入りを阻止したり、クズネツォフを逮捕しようとすれば、護衛はグルジア領域へ向けて発砲し、それは銃撃戦になって発展する可能性がありました。クズネツォフの陳述はナシの資金がロシア政府のウラジスラフ・サーコフ（Vladislav Surkov）のオフィスから出ているという職の報告を裏づけました。ナシの創設者はロシアの青年問題委員長バシリ・ヤケメンコ（Vasili Yakemenko）です。
レポートを見る限り、これまで繰り返されてきたロシアのグルジア介入の繰り返しです。メドベージェフ大統領の発言の真意は、グルジア国内に親露派を作り出して、反政府運動を起こし、民主主義を守るという口実の元に親米政権を転覆させることです。グルジア政府は前回の失敗に懲り、西ヨーロッパの意見を参考にして、デモ隊との衝突を避けているようです。下手に取り締まれば、ロシア軍が「民主的なデモ隊が攻撃を受けた」という理由を立てて武力侵攻してきます。フランス大使の発言も、グルジア政府がデモ隊を弾圧などしていないことを世界に知らせるための工夫と見えます。このため、ロシアも簡単には手が出せないでしょう。
アルカイダとタリバンとの戦い、ソマリアの海賊で、各国にはテロ防止で協力するという態勢ができあがりました。この態勢には、実は各国の利害が隠れており、必ずしも安定した同盟ではない点に注意が必要です。ロシアは現状ならアメリカは自国と深い対立は望まないと考え、できる範囲で地歩を固めているのです。サーカシビリ大統領は、ロシアがアメリカとの関係を壊してまで武力侵攻を行うとは考えていないようですが、現実に軍隊を増強しているのは軽視すべきではありません。５月６日から６月１日まで、NATO主導の軍事演習がグルジアで行われる予定です。これは武器を使わない、紛争地域から離れた場所で行われる演習ですが、ロシアは反発しています。今のところ、グルジアはうまく対応していますが、巧妙な工作がロシアの武力介入を成功させる可能性は十分にあります。現在以上の事件が起こるようなら、それはロシアが本気で腰をあげた証拠です。
