military.comによれば、武装ヘリコプターとジェット機の支援を受けたパキスタン軍の特殊部隊がブネール峡谷(the Buner Valley)で攻勢に出て、タリバンを追い出しました。一方、military.comの別の記事はタリバンのアフガニスタンでの新しい作戦について書いています。
ブネール峡谷の主要都市ダッガー(Daggar)に兵士がヘリボーンで輸送され、地元警察と先に派遣されていた準軍事組織と共に地域を包囲しました。武装ヘリコプターとジェット機がダッガー周辺の武装勢力の拠点を攻撃しました。武装勢力の被害は明らかではありません。
ダッガーがどこにあるのかは、まだ私は確認できていません。別の報道では、北部国境にいる兵士2,500人が首都に配置換えになったといいます。タリバンが首都を攻撃する恐れが出てきたためだといいます。政府施設周辺には自爆攻撃を防ぐための高さ2メートルの防護壁が建造中です。これは組織的、大規模な攻撃というよりは、自爆攻撃への対処だと考えられます。スワト地区から首都までは、まだ距離があり、中間を大河が隔てています。山間地区では有利なタリバンも平地ではパキスタン軍に劣ると考えられます。車両などで移動すれば、途中で阻止されるでしょう。首都まで100kmとしても、タリバンは戦車を多数保有しているわけではなく、首都を攻め落とせるわけではないからです。しかし、自爆ベストを身につけた者が自爆攻撃を仕掛けるのは難しくありません。パキスタン政府の威信を失墜させ、タリバンの威光を輝かせるために、首都での自爆攻撃は効果があります。もっとも、首都に至る経路の中間点には巨大なタルベラ・ダム(Tarbela dam・kmzファイル)があります。ここは洪水の防止と水力発電の両方に使われており、ここをタリバンに確保されることは、パキスタン政府にとって致命的です。
もう一つの記事によれば、アフガンのタリバンは、これはアメリカとNATOの増派に抗議するため、外交官に狙いを定めた自爆攻撃と襲撃によって攻撃する、「ナスラット(勝利)作戦(Operation Nasrat)」を実行すると脅迫しています。この声明は、タリバンの広報官ザビフラ・ムジャヒッド(Zabihullah Mujahid)が電話でAFPに対して述べたもので、指導者ムラー・モハマンド・オマル(Mullah Mohammad Omar)の副官、ムラー・ボラダル(Mullah Boradar)の署名で出されました。攻撃対象は、侵略軍の部隊、外交の拠点、輸送隊、傀儡政府の高官、憲兵、防衛関係の従業員、内務省、情報省です。
春になって気温が上がり、攻勢を仕掛ける条件が整ったので、タリバンが活動を活発化させているのだとはいえ、彼らがこれほど勢力をつけた理由がよく分かりません。実際には、主力はパキスタンに移動しており、ナスラット作戦は陽動のための宣伝工作とも考えられますが、今後、アフガンでも攻撃が活発化するかも知れません。タリバンの資金が潤沢なのが理由なら、これまでの麻薬取り締まりの成果が出ていないことになります。タリバンは貧困層の側に立ち、民衆を味方につけることで、権力側との対決を容易にしています。アフガンもパキスタンも古い慣習に基づいた社会で、不満を持つ者を掘り起こすのは難しくなさそうです。西欧型民主主義も定着していません。短期的にはタリバンの最前衛部分を攻撃すべきです。インドと交渉して、パキスタンがインドとの紛争を気にせずにタリバン対策に専念できるようにするのも必要です。しかし、タリバンを完全に弱体化させる手段を見つけられるかどうかは、目下のところ不明です。