今回、APF通信社から、日本列島を通過するテポドン2号を撮影したいので、アドバイザーとして撮影現場に来て欲しいとの依頼を受けました。撮影場所はPAC-3が配備された新屋演習場から南へ約5kmにある浜田海水浴場でした。私は、ここ数日何度もテレビに出演しているチャールズ・ビック氏にもこの件を伝え、情報提供を頂きました。
天文写真で実績のある方々や、ロケットの軌道計算ができるに集まって頂き、私は必要な情報を彼らに提供するというスタイルで作業は進められました。チャンスは少ないものの、撮影できないわけではないので、その小さな可能性に賭けたわけです。しかし、テポドン2号が日本列島を通過した時、かなりの雲が空を覆い、テポドン2号の光点を発見することはできませんでした。
テポドン2号の打ち上げた伝えられた時、遠くでサイレンが鳴るのが聞こえました。また、日本列島を通過したことが確認された後で、海保のヘリコプターが沖合へ向かうのを確認しました。テポドン2号の残骸を探したり、被害の確認をするために飛んできたのだと思われます。撮影隊の頭上を通過する時、しばらくホバリングしていました。テポドン2号の残骸は発見できなかったものの、海岸でカメラを構える怪しい一行を発見したというわけです。
今回のテポドン2号打ち上げの評価
北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の発表によれば、テポドン2号は人工衛星を軌道に投入するのには失敗しました。しかし、2006年の打ち上げと違い、日本列島を飛び越えるのには成功しました。
今回の打ち上げで特筆すべきは、前回は正常に作動しなかった1段機体が機能したらしいということです。前回の失敗の原因とみられるジンバルは、おそらく正常に動いたのでしょう。しかし、1段機体の落下位置が秋田県西方沖約280kmと、あまり飛ばなかったことから、1段機体の推力が未だに不足しているとか、姿勢制御がうまくいかなくて、危険区域ギリギリに落下した可能性があります。これは、2段機体と3段機体の飛行にも、当然、影響を与えます。もし、人工衛星を軌道に投入するために必要な速度または高度、あるいはその両方を得られなければ、人工衛星ロケットとしては失敗作ということになります。
今回、2段機体と3段機体の分離が確認されず、危険区域よりも大幅に日本寄りに落下したということは、3段機体がうまく分離できず、2段機体の燃焼が終わった後、3段機体と人工衛星を搭載したまま墜落した可能性が高いことになります。2段機体に問題があったとすれば、これは重大な問題です。2段機体はノドンBのエンジン1基を使っているわけで、これが制御できないとは考えにくいからです。しかし、3段機体の分離に失敗したとすれば、燃焼を終えた2段機体が落下したのは、特に理解できない話ではありません。
緯度方向でロケットの飛行コースがどれだけずれていたのかも検討する必要があります。
以上を考えると、現在のテポドン2号は軍事ミサイルへの転用はとてもできないということになります。しかし、技術は確実に進歩していることが確認されたのも間違いがありません。少なくとも、前回の失敗は克服できたらしいのです。さらに、テポドン2号が強い風に非常に弱いことも明らかになりました。8〜12m/sで打ち上げが延期されたのですから、H-IIロケットよりはよほど風に弱いことになります。また、比較的軽いはずの人工衛星を積んでも、これだけしか飛べないのなら、より重い核爆弾を搭載した場合、射程は現在いわれているほどでないと推測されます。
この他に、今後の展開についても書かなければなりませんが、とりあえずロケットについてだけ書きました。