テポドン2号に関する報道をいくつか取り上げます。テポドン2号打ち上げ全般に関する私の見解はのちほど掲載したいと思います。
space-war.comがデジタルグローブ社の人工衛星が捉えたテポドン2号発射の瞬間について報じました。(高解像度の衛星写真はこちら)
この写真は国内メディアも報じました。その中で信頼度が高い見解は、北朝鮮が意図して衛星写真を撮影させたということです。global-security.orgの解説でも「人工衛星が必要な時、衛星は地球の反対側にいて、ようやく手に入れた写真は雲で覆われている」という映像アナリストの言い習わしを紹介し、秒速4マイルで移動する人工衛星「ワールドビュー1」が、このような写真を撮らせるために、北朝鮮が打ち上げ時刻を調整した可能性を指摘しています。
なお、この写真が1段機体の分離の瞬間かその直前直後を表しているという見解がありますが、私には確証が持てません。まず、見たところでは、テポドン2号は打ち上げ直後の状態のように思われます。背後に見える陸地は打ち上げ基地とその東方を含んでいますが、テポドン2号がその上空にいるかどうかは不明です。人工衛星がどの位置から、どの距離で撮影したかも分からないと、テポドン2号の位置は特定できそうにありません。仮に東側の海岸線近くにいるとすると、発射台からは水平距離が約5kmで、高度は14kmというところです。この高さから、1段機体を切り離して落下指定区域に届くかという疑問が湧きます。実際には、テポドン2号がもっと遠くにいるとしても、精々、打ち上げ後1〜2分間であり、この段階ではまだ1段機体は分離していないように思われます。写真に写っている光から、分離の状況を説明している人もいましたが、写真によって見え方が異なります。global-security.orgとdigitalglobe.comの写真データは微妙に異なっているのです。より解像度が高いdigitalglobe.comの写真を見ても、これが分離した瞬間だとは断言できないように思われます。むしろ、妙な形の光が見えることは、何らかのトラブルが起きている可能性を示唆しているようにも思われます。今のところ、私は海外のメディアで、これが分離の瞬間を捉えた写真だと説明している記事を見つけていません。
space-war.comが、労働新聞に掲載された金正日総書記の言葉を紹介しています。テポドン2号打ち上げ成功の記事の中に、金正日が「もっと多くの金を民生に使えないことを遺憾に思い、すすり泣きで胸が痛む。我が民はそれでも理解するだろう」というコメントが掲載されたというのです。芝居がかったセリフであり、このコメントが本心かどうかは疑問です。しかし、彼がこう言わねばならなかったのは、ロケット開発に関して国内で反対意見が存在することを窺わせます。これは、北朝鮮が今後もロケット開発を続けられるかどうかを考える上で、一つの材料となります。
space-war.comには、ロケット発射が成功であれ、失敗であれ、金正日体制を支えるのに役立つという記事も載っています。この記事の末尾に、韓国の中央日報の記事として、気になることが書かれています。舞水端里基地を守るためにスクランブル発進したミグ21が1機、整備不良のために墜落したというのです。基地を守るために配備されたのはミグ23と報じられていましたが、実際に飛行したのはミグ21で、それが墜落したわけです。これは北朝鮮の空軍力が壊滅状態であることを意味するのかも知れません。(追加 この記事を書いた後で、墜落したのはミグ23で、無理な偵察飛行が墜落の原因で、エンジンの欠陥の可能性もあると聯合ニュースが報じていることが分かりました。いずれが本当化の確認は、現段階では取れていません。)