日本のマスコミに欠けるもの

2009.5.12



 毎日新聞によると、討論番組「朝まで生テレビ」で田原総一朗氏が北朝鮮の拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんについて、「外務省も生きていないことは分かっている」などと発言し、家族会は抗議文をテレビ朝日に送付しました。

 田原氏がテレビで述べたのは「外務省も生きていないことは分かっている」という言葉で、家族会の抗議文については「家族のお気持ちは分かる。ただ、情報源は言えないが情報を得ている」と述べているそうです。田原氏がいくら情報源は秘密だと言っても、情報源は政府筋(多分、外務省)だと自然に推測でき、政府系の情報を自分で確認もしていないのに確定的な情報として公言するのがジャーナリズムなのかという疑問が湧きます。私は確定できない情報は常に未確定として扱います。拉致被害者については、死亡が確認されていない以上は生存していると考えています。現在、日本に帰国している拉致被害者の方々も、日本が死亡していると結論していたら、北朝鮮も帰すことができなかったのでしょう。彼らは北朝鮮にはいないというのが、北朝鮮の公式見解だったからです。だから、日本側から拉致被害者の死亡を主張することには意味がありません。田原氏が死亡説を主張した理由・意図はまったく分かりません。

 日本のマスコミには分析力に乏しく、政府や団体などから出てくる情報をそのまま流すという欠点があります。「オレはすごい話を知ってるんダ」というレベルの報道は時代遅れです。それよりパキスタンの実状を詳しく調べて教えて欲しい…と言いたくなります。

 最近起きた愛知県での殺人事件についても、1週間近く経ってから現場で警察官が犯人を目撃しながら逃がしたことが明らかにされました。この事件では、生存者の証言と現場の状況が矛盾することから、割り切れない印象を受けていました。最初から分かっていた情報があえて隠匿されたため、誤ったイメージが流布されたのです。現場での犯人目撃は初日に報じられるべき内容です。捜査本部は警察批判が殺到することを恐れて、公表する日を遅らせたのではないかと考えられます。しかし、その結果、事件の内容が正しく報じられなかっただけでなく、貴重な目撃者の記憶も集め損ねたのではないかという懸念があります。この事件は、情報の伝え方次第で、まったく違ったものが見えます。誤った情報も、見かけ上自然に見えて疑うことができない場合もあります。田原氏みたいに政府筋の情報を仕入れて結論とするのでは、ジャーナリズムは必要がないのだと言えます。


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