タリバンがアフガン軍から武器を入手?

2009.5.22



 military.comによると、アフガニスタンの武装勢力が、米軍からアフガン軍に提供された弾薬を使っていることが明らかになりました。

 先月、米軍の歩兵部隊が東アフガンで夜間の待ち伏せ攻撃で少なくとも13人の武装勢力を殺害しました。武装勢力の遺体からライフル銃10丁、ロケットランチャー1基、1,000発以下の弾薬を含む弾倉30個などが見つかりました。米軍は記者に、武器のシリアルナンバーと薬莢の底にある「ヘッドスタンプ」と呼ばれる、製造期を表すマークの写真撮影を認めました。弾薬は直径7.62mm×全長39mmで、カラシニコフ銃(AK-47)で使われ、ロシア、ウクライナなどの元ワルシャワ条約国、中国、北朝鮮、キューバ、インド、パキスタン、アメリカで製造されています。17個の弾倉には「WOLF」と「bxn」のマークがあり、「WOLF」は、カルフォルニア州にあるロシア製の弾薬をアメリカの銃オーナーに販売する会社「Wolf Performance Ammunition」を意味します。この会社はアフガン軍と警察に弾薬を供給しています。「bxn」は冷戦期にチェコ工場において製造されたことを意味し、チェコ政府は2004年にアフガン政府に余剰の弾薬を提供していました。また、昨年詐欺で米国防総省との納入業者から外された会社「A.E.Y.」もアフガン政府にチェコ製の弾薬を提供したことがあります。Wolf社、A.E.Y.社、チェコ政府が承知の上で武装勢力に弾薬を引き渡した証拠はありません。ヘッドスタンプからは、13個の弾倉の弾薬のほとんどがソ連期のロシアで製造されたことを示しています。いくつかの弾薬は中国で1960代〜1970代に作られていました。10丁のライフル銃は、1960代〜1970代に、中国とロシアのイジェフスク(Izhevsk)の工場で製造されていました。これらの情報を記者が米軍に提供すると、中国製ライフル銃のひとつが2007年にアフガンの警察官助手に提供されていたことが明らかになりました。弾薬が数種類あったことは、タリバンが弾薬を不正に手に入れたのではなく、戦場で失われた物を入手した可能性を示唆すると、米軍のアントニー・R・ アイラディ准将(Brig. Gen. Anthony R. Ierardi)は述べています。ケニア、ウガンダ、スーダンで弾薬の流用を調査したことがあるジェームズ・ビヴァン氏(James Bevan)は、アフガンの通訳、兵士、警察官が利益のために武装勢力に撃ったか、武装勢力を支援するために渡した可能性があると指摘しています。

 イラクでも莫大な武器や弾薬がイラク軍から武装勢力の手に渡っていた事例があり、当サイトでも何度も取り上げてきました。アフガンで同じことが起きてもまったく不思議ではありません。パキスタンで同じことが起きたとしても、やはり驚くことではありません。もともと、米軍は弾薬をさほど厳重に管理しませんし、銃器類も完全に管理するのは不可能です。しかし、その数が膨大ならば、やはり不正によって武器弾薬が流用されていると考えるべきです。米軍兵士がこうした犯罪に手を染めることもあり、つい最近も、イラクに派遣された米陸軍大尉が米軍の装備品である車両をイラク人ビジネスマンに転売して有罪判決を受けたとmilitary.comが報じています。戦争においては、軍需品と民生品を問わない大量の物資が、簡単な監査だけで右から左へと動かされます。戦争で使う物資は欠乏しないように最優先で運ばれるため、その過程や提供された後で盗み取るのは比較的簡単なのです。それも、通常ではあり得ないような数量であるのを見れば、悪い気を起こす者がいても不思議ではありません。戦争に「物」は付き物であり、その気になれば一財産築けるのです。こうした問題を無視して戦争を語ることはできません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.