spacewar.comが、25日に北朝鮮が爆発させた核爆弾は、ロシアが見積もった20ktよりも遙かに小さい4kt程度だと、ドイツの研究家が発表しました。その内容は衝撃的です。
ハンブルグ大学「科学と平和の研究のためのカール・フリードリヒ・フォン・ワイツゼッカー・センター」のマーティン・カリノウスキー教授(Martin Kalinowski)は、ロシアがどのようにして20ktという数字に到達したのか途方に暮れ、専門的な証拠を見出せなかったといいました。教授は、この爆発が核爆弾であることを証明する確実な科学的な証拠は、放射能をもつ粒子か、地下爆発で吹き出す稀少ガスを検出することだけども、爆発の場所と大きさから核爆弾の可能性が高いと教授はいいます。2006年10月の核実験では、ロシアが5〜15ktの間と見積もりましたが、後に専門家が1ktかそれ以下へと格下げしました。このため、北朝鮮は敵を騙すためにTNT火薬を大量に爆発させたという理論が生まれましたが、放射性同位体が観測されて否定されました。別の仮説は、爆発はしたが、連鎖反応に入るのに失敗したというものでした。もう一つの仮説は、北朝鮮が既に小型化に成功した核爆弾を爆発させたというものでした。カリノウスキー教授は今回の核実験で小型核爆弾は使われていないと考えています。また、4ktの爆発は北朝鮮が目標を達しなかったことを示しますが、人が2kgのプルトニウムから生産できるエネルギーとほぼ同じです。北朝鮮が爆発させたのは第一世代の核爆弾であり、それは10〜20ktよりも大きく上回ることはないと、教授はいいます。
先に、核爆発の威力については、慎重に判断すべきだと書きましたが、やはりロシアの見積もりは大きすぎたようです。記事には4ktと結論した根拠は書かれていませんが、同センターが発表したファクトシート「Second nuclear test conducted by North Korea on 25 May 2009」(pdfファイルはこちら)には、考察の根拠が盛り込まれています。それを簡単に説明すると、放出エネルギーが確認されている核実験と地震マグニチュードとの関係から、今回の北朝鮮の核実験の放出エネルギーを推定したということです。核爆発の放出エネルギーは1.5〜4.5ktの間であり、最もあり得るのは2.5ktです。ただし、日本のM5.3という観測データを元にすると、20ktという数字も出てきます。2006年の実験は0.5〜0.8ktだったと見積もられています。
この考察から日本の観測データM5.3は大きすぎる数値かも知れないという仮説が出てきます。4ktという爆発力は、戦術用の原子砲の核砲弾に匹敵する威力で、戦略核兵器としては威力が弱すぎます。NATOの203mm榴弾砲から発射する核砲弾が5ktです。この威力と北朝鮮のロケットの精度を合わせて考えると、軍事的アドバンテージとしてはかなり弱い話になります。下手をすると、洋上に落ちたりしてほとんど戦果を生まないかも知れません。日本としては少し安心できる情報が出てきたことになります。こんな効果の薄い兵器を使う気にはなれませんし、その後、報復のために本土が攻撃されることを考えると、余計に使う気にはならないでしょう。おまけに、外交上の恫喝にもほとんど使えません。足元を見られてしまうだけです。現に、韓国は核実験よりも前大統領の自殺の方に話題が集中しているといいます。怖がってくれているのは日本だけかも知れません。少なくとも、アメリカをこの程度の兵器で脅かすことはできません。彼らは国土が広く、北朝鮮からも遠い上に、報復の手段を沢山持っているからです。
ところで、今朝のテレビニュースではこの記事を報じた番組を見ませんでした。昼には報じられるのでしょうか?