グリーン元上等兵が仮釈放のない終身刑に

2009.5.29



 military.comによると、当サイトで何度も取り上げてきたスティーブン・デール・グリーン元上等兵(Former Pfc. Steven Dale Green)の裁判で判決が下され、終身刑に決まりました。グリーンと他4人の米軍人はイラクのマハムディヤでアル・ジャナビ家を襲撃して殺害しました。その中には強姦されて殺された14歳の少女も含まれていました。

スティーブン・デール・グリーン元上等兵
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 記事によると、グリーンは終身刑を全うした後で、自分は神の裁き似合うと述べ、被害者の家族に謝罪したといいますが、彼が犯した罪は明らかに死に値すると、私は考えます。グリーンは人格障害で除隊させられた後で逮捕されたため、軍事裁判ではなく、一般の刑事法廷で裁かれました。軍事裁判なら確実に死刑だった事案でした。法廷でも死刑が求刑されましたが、陪審員は有罪に関しては満場一致でしたが、死刑については意見が一致せず、仮釈放のない終身刑になったのです。犯行の様態を見れば、グリーンは明らかに異常者であり、さらに被害者を出す前に社会から隔離する必要がありました。

 「スティーブン・D・グリーン」というキーワードで当サイトを検索すれば、事件の詳細が分かります。これは正規軍兵士の士気もこの程度であることがよく分かる事件でした。日本の政治家の中には、イラク戦に自衛隊を参加させたいと、喉元まで出かかっている人たちがいるようですが、こうした事件が何度も起きていることに目を向けているのかは疑問です。この事件は、犯人たちが謀議を行っているのを目撃した隊員がいましたが、彼は上官に報告しませんでした。その後、事件に怒った地元の武装勢力が米兵を拷問・殺害したために、謀議を目撃した兵士が告発したものでした。日本には自衛隊が合憲かどうかという問題があって、合憲を主張したい人たちは、軍事活動はどの国も行っている正当な行為と言いたがる傾向があります。しかし、軍事活動の多くは殺人と破壊を目標という日常とは異なる行為を本質としている点が無視されがちです。さらに、こうした本質とは関係のないところで重大な事件も起こります。こういう戦争の常識を無視して、理屈だけで議論することは、戦争を考える上で致命傷となる問題です。

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