韓国軍と在韓米軍が北朝鮮を警戒

2009.5.30



 北朝鮮に関係するニュースがいくつかあります。spacewar.comによれば、韓国軍と在韓米軍は、北朝鮮の核実験で高まった緊張によって北朝鮮が休戦を停止すると宣言し、攻撃の可能性を警告したことを受けて、軍をより高い警戒態勢に置きました。

 韓国は、北朝鮮の軍事的挑発を防ぐために堅固な防衛態勢を維持しているとしています。ヒラリー・クリントン国務長官は、アメリカは日本と韓国を守るという決意を強調しました。北朝鮮が休戦を破棄したと宣言するのは、これで15年間で5回目です。

 この記事を読んで、日本の自衛隊はどうしているのだろうと思いました。警戒態勢をあげたという話は聞きませんし、浜田防衛大臣は29日にシンガポールを訪問しています。在韓米軍が警戒態勢をあげたのなら、それをバックアップする在日米軍にも変化が起きているはずです。まして、北朝鮮の核爆弾は日本を狙っていると日本政府も考えているのですから、自衛隊も警戒態勢をあげるのが相当です。しかし、何の動きもないということは、本当に北朝鮮が日本を攻撃するとは、誰も考えていないということなのでしょう。

 別の記事は、北朝鮮に関してはアメリカにとって魅力的な軍事的選択肢はないと書いています。北朝鮮は百万人以上の兵隊と、日本と韓国を狙った大量の大砲とミサイルを持ち、開戦初日に何十万人もの死傷者を出すことができます。ランド・コーポレーションの上級研究員チャイボン・ハム(Chaibong Hahm)は、全面戦争では死傷者の数は想像もつかないといいます。アトランティック・マガジン誌が2005年に元米政府高官によって行った図上演習では、米空軍が1日に4,000回出撃して大砲とミサイルを攻撃しても、100,000人が死傷するという控えめな見積もりが出されました。ビル・クリントン前大統領は核燃料再処理工場への先制攻撃を熟慮しました。しかし、核兵器とウラン濃縮施設は位置を推測できるだけで、どこにあるのかは分かっていません。先制攻撃が失敗すれば、核・化学・生物兵器による反撃を覚悟しなければなりません。ウィリアム・ペリー前国防長官は、成功するチャンスのある外交のために、軍事行動を含む広範囲の強制的な手法を考えるべきだと主張します。ペリーは軍事行動を推奨してはいませんが、それを含んだ措置で北朝鮮の脅威を避けるべきだと主張しています。ブッシュ政権(父親の方)で特別顧問を務めたブレント・スコークロフトも、ペリーの意見に賛成しています。

 時間がないので、記事のすべては紹介していません。関心のある方は原文を読んでください。北朝鮮に関しては、軍事目的のために軍事行動を行うのは無意味で、外交を成功させるために用いるべきだという意見です。目下のところ、北朝鮮については、これしか手がないのが実状です。こうした神経をすり減らすようなやり方に耐えられない人が出てくると、軍事行動を推奨するようになるのです。

 さらに、脱北者が北朝鮮の現状を語った記事もあります。一部の軍人が栄養失調で苦しんでいること。脱北者の一部が結核のような伝染病にかかっていること。栄養失調のために大臼歯を失っており、入れ歯を必要としていること。

 北朝鮮の実状が悪化していることが、さらに裏づけられます。現在、北朝鮮は気が違ったように軍事的圧力をかけてきています。これは彼らの実状がどんどん悪くなっていることを意味します。かつては、北朝鮮は恫喝よりも自らの先進性を宣伝する国でした。しかし、その優位性は失われ、旧ソ連の後ろ盾もなくなり、共産主義自体が斜陽になってきたため、恫喝外交をするしかなくなったのです。彼らの脅迫は恐れるべきではなく、冷静に観察し、暴発を防ぎながら国家解体へ導くことが重要だと、私は考えます。

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