タリバンがスワト峡谷の主要都市を奪取

2009.5.7



 military.comによると、スワト峡谷(Swat valley)の主要都市ミンゴラ(Mingora・kmzファイル)がタリバンの手に落ちました。

 学校長ジャウディン・ユフスゼイ(Zia-ud-Din Yusufzai)はパキスタン当局のアドバイスに従って妻と子供3人を連れてミンゴラから逃げました。「タリバンが街を陥落させたといってよいです。すべてが避難できたわけではなく、残った人たちはタリバンの人質になっています・スワトのために祈ってください」と彼は述べています。月曜日に、パキスタンのザルダリ大統領(President Asif Ali Zardari)はアメリカの特使リチャード・ホルブルック(Richard Holbrooke)に、陸軍がこの領域を奪還すると述べたばかりでした。しかし、火曜日になっても陸軍が作戦に着手した様子はなく、タリバンはミンゴラ市内の道路に地雷を仕掛けはじめました。タリバンはパキスタンの核兵器やその他の軍事施設により近づいています。スワトとブネール(Buner)は巨大なタルベラダムと、アフガニスタンに駐留する米軍とNATOの主要な補給路と首都イスラマバードおよび2百万人が住むペシャワール(Peshawar)をつなぐ重要な幹線道路に近いのです。記事は、最悪のシナリオはスワトでの内乱がパンジャブ州(Punjab province)とイスラマバードでイスラム過激派グループの共感的な反乱を呼び起こすことだと書いています。現地の政府は500,000人が難民になると想定しています。

 事態はかなり深刻です。まず、パキスタンの核施設の多くがこの周辺に集まっています。globalsecurity.orgに掲載されているマップを見ると、ピンク色で示される核関連施設、赤色のミサイル施設の配置が分かります。さらに詳しい情報はglobalsecurity.orgでご覧下さい。

マップは右クリックで拡大できます。


 また、タリバンがパンジャブ州に勢力を伸ばしたとすると、隣国インドにタリバンが到達することになり、インドの安全保障問題へと発展します。

 何が問題かと言って、パキスタンはもうかなりの期間をタリバンと戦っているのに、徐々に彼らに勢力範囲を拡げられていることを言わないわけにはいきません。アフガンとの国境付近にはパシュトゥーン人が少数派として存在しますが、彼らはアフガンでは多数派です。こうした地域では分離独立運動が起こり得ます。パキスタンがタリバンを食い止められるかはまったく不透明です。


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