東倉里の発射設備がさらに進展

2009.6.17



 spacewar.comによると、朝鮮日報が東倉里発射施設の建設がさらに進んだと報じました。一方、日本政府は北朝鮮が舞水端里と東倉里の両方で打ち上げの準備を進めているという認識を示しました。military.comは、3年以内に北朝鮮がアメリカに弾道ミサイルを命中させるようになるという見通しを報じています。

 spacewar.comの記事の元となった朝鮮日報の記事は、短期間でアーカイブに格納され読めなくなるはずですので、アドレスを示しておきます(記事)。この記事に書かれている「大型の足場」は以前にここで「サービスレベル」という名称で紹介したものです。この足場はケーブル類をロケットに接続したり、スタッフがロケットの近くまで行くために設けられるもので、打ち上げには不可欠です。しかし、レーダー施設は未だに完成していません。さらに注目すべきは発射台全体の高さが50mで、舞水端里の32mを大きく上回ることが分かったという点です。「東倉里発射施設の規模が舞水端里の3倍」だという主張は、何の規模が大きくなったのかが不明です。なお、この記事のイラストにはアンビリカル塔の上にクレーンが描かれていますが、これは存在しないはずです。

 サービスレベルの完成は施設全体の完成とはいえません。まずは発射台に関連する装備がすべて正常に動くかどうかの確認が行われ、スタッフの訓練も行われてから、機体を据え付けるという話になります。さらに、レーダー施設も未完成なのでは、東倉里からの打ち上げはやはり無理です。北朝鮮がなぜ機体を搬入して、組み立てているのかは分かりません。記事は高さが50mの発射台では40mかそれ以上のロケットを打ち上げられると書いています。スペースシャトルの補助ブースターの高さは45.5mで、日本の「H-IIA 212」は52.6mです。ざっと、この程度のロケットを打ち上げる能力が東倉里にはあるわけです。前回打ち上げたテポドン2号よりも少しい大きいロケットが北朝鮮のロケット開発の最終目標だということになります。

 産経新聞が17日付で、舞水端里にも「長距離弾道ミサイルの機材が運び込まれた形跡があることが判明。車両や人の動きから、東倉里と同時並行で発射準備を進めているとみている。」と報じました。「日本政府内には、舞水端里と東倉里のどちらかの発射準備はダミー」との見方があるとも報じていますが、打ち上げ場所を秘匿しても、発射台に据え付けてから打ち上げるまでには一定の時間がかかりますから、大した欺瞞効果はないものと考えられます。そもそも、そのために北朝鮮が両方の施設で準備をしているのかも不明です。もともと、東倉里からは発射できそうにありませんし、舞水端里から打ち上げると簡単に予測できる話にしかなりません。もっとも、北朝鮮のすることは意味不明の場合が多いので、正確な予測はできないでしょう。日本政府は再び迎撃態勢をとるとも、記事には書かれています。あの愚行がまた繰り返されます。効果はなくても、やらないよりはマシというわけです。

 military.comによると、統合参謀本部副議長ジェームズ・カートライト大将(Gen. James Cartwright)が上院軍事委員会で、北朝鮮がアメリカの西海岸に脅威を及ぼすようになるには、3〜5年でミサイルをアメリカに命中させられるようになるだろうと述べました。しかし、カートライト大将は、この見通しには多くの幸運を仮定しているとも述べました。つまり、大将が言いたいのは、すごく運がよければ北朝鮮は3〜5年で西海岸に届く弾道ミサイルを完成するかも知れないから、MD予算を減らさないでくださいということです。軍人が議会で証言するのは予算に関する審議で参考意見を述べるためで、大抵の場合、近い未来の脅威が主張されます。つまり、近い未来にこんな危険が考えられます、という話を議員の耳に入れておくわけです。いきおい3年後あたりに何か脅威があるといった話が多くなるのは自然なことです。こうした情報を、日本のマスコミは無批判、大げさに報じることがあります。そして、インターネットの掲示板などで軍事マニアが連鎖反応を起こして騒ぐといった光景が繰り返されています。私は東倉里のレーダーが完成するだけで3年かかるのではないか、と思っています。


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