読売新聞によれば、防衛省は北朝鮮の東倉里で発射準備が進められている長距離弾道ミサイルは、青森上空を通過してハワイに向かうルートで発射される可能性が高いと分析しています。
防衛省はこの長距離弾道ミサイルが沖縄、グアム、ハワイの3方向に発射される可能性があると予測しましたが、沖縄方面では1段目のブースターが中国沿岸に落下し、グアム方面では韓国と日本の中国・四国地方を通過するため、ブースターが陸地に落下するので可能性が極めて低いとしています。しかし、ハワイまでは距離が7,000kmあり、射程4,000〜6,000kmのテポドン2号改良型では届かないと、記事は結論しています。
この記事には苦笑せざるを得ません。最も可能性が低いルートを最も高いと予測し、そのルートの最大の欠点を無視しているからです。去年から私は、このルートでロケットを打ち上げると、高度が低い内に北朝鮮領内を飛行するため、事故が起きた場合、被害が甚大だと述べてきました。それも首都・平壌の近くで事故が起きる可能性もあります。グアムのルートは想定する必要もないのであり、グアムに米軍基地があることから連想したに過ぎません。防衛省がハワイ・ルートを主張するのは、前回と同じの方が対応が楽であるためでしょうか。しかし、言うまでもなく自分がやりやすい方向で敵の動向を予測するのは、軍事的考察として最悪です。
そもそも、人工衛星ロケットは人工衛星を軌道上に運ぶのが仕事なのに、沖縄、グアム、ハワイという地上の場所が到達目標であるかのように論じることがナンセンスです。テポドン2号改良型がハワイまで届かなくても、人工衛星を投入する高度までロケットが上昇できれば、打ち上げの目的は達成します。地名を出せば危機感を煽れるという安直な発想が根底にあるように思われます。
この記事は日本のミサイル防衛を司る人たちの実力に大きな疑問を感じさせるものです。先の、空列車の件もあり、私の日本のミサイル防衛への疑問は非常に大きなものになっています。これでは到底、国は守れません。