military.com によれば、アメリカの政府説明責任局 (The Government Accountability Office: GAO)が、テロ組織や外国政府が軍用と民生用の両方に利用できる技術をアメリカから購入していることを指摘しました。アフガニスタンのタリバン戦士がこうしたアメリカ製の最新技術を活用しています。
GAOはトンネル会社と偽の身分を作り、暗視スコープとイラクとアフガンで米兵が着用する特殊な赤外線パッチを購入するのに成功しました。赤外線パッチをは敵味方の識別に使われます。タリバン戦士は米軍の制服と赤外線パッチを、米軍やNATO軍に接近するために使いました。IEDを作るのにも使われる、物体の勾配と傾斜を測る傾斜計も間違った側の手に落ちていました。偽の取引により、核装置、核弾頭を運搬できる誘導ミサイルを作るのに使われる部品、防弾具、地上戦用のハードウェア、核兵器を起爆するのに使われるスパークギャップ、IEDを作るのに使われる電子センサー、誘導ミサイルや航空機に使われるジャイロチップも購入されました。GAOは民生用にも活用できる軍事技術は米国内で比較的簡単に、合法的に製造業者や卸業者から入手できたり、不法に国外に輸出されているとしています。
軍用・民生用の両方に使用できる機材はいくつもあり、完全に敵の手に渡るのを防ぐことはできません。実際、日本が第2次世界大戦中に兵器を造るのに使ってきた機械は、敵国のものばかりだったといいます。しかし、敵の手に渡ることを防げるものもあるわけで、そうした物品を細々と監視する話に発展するのは当然です。赤外線パッチが流れているのは重大な問題です。赤外線パッチは見た目はただの黒いパッチですが、暗視スコープを通すと味方を示すマークが見えるという仕掛けです。実は、日本の軍事マニア向けのショップで、この実物が売られています。こうした店は正規ルートで仕入れている模様ですから、GAOはトンネル会社を作らなくても手に入れられたでしょう。こんな調子なので、タリバンが手に入れたとしても不思議ではありません。しかし、かつては僻地のテロ組織とみられていたタリバンが、ここまでやるようになったという点は注目に値します。
もう一つ、GAO関係の記事があります。military.com によれば、20年以上の開発期間と270億ドルの開発費を費やしたV-22「オスプレイ」 はアフガンのような高い脅威のある場所での任務に耐えられないかも知れないとGAOが報告しました。1月の時点で、12機のオスプレイがイラクの低い脅威の環境において任務を終えましたが、軍はいくつかの欠点のために使用を制限したために、意図された任務のすべてを行いませんでした。オスプレイは離陸と着陸に際して、敵の攻撃から身を守る機能を持っていません。
戦闘機の場合は、離陸時に急上昇してミサイルを攪乱する「チャフ」を撒き、同時に進行方向を変えるという発進方法がありますが、オスプレイにはそれがないので航空機と同じように使えない問題があるようです。オスプレイは構造が複雑すぎるのかも知れません。日本にはGAOのような組織がないので、欠陥のある兵器が問題にされることもありません。日本でこうした政府組織が実現可能かは難しい問題です。到底、議論の対象にならないという気がします。特に、トンネル会社まで作って調査するという発想は皆無です。