韓国が地中貫通爆弾と無人偵察機を導入か?

2009.6.4



 韓国軍と在韓米軍が北朝鮮のロケット打ち上げに備えた動きを見せています。アメリカは韓国にバンカーバスター爆弾(地中貫通爆弾)と無人偵察機グローバルホークの売却を認める意向です。

 spacewar.comによると、アメリカはGBU-28は湾岸戦争で使われたことで知られる、地下施設を破壊するための専用爆弾を、2010〜2014年の間に韓国に配備することに合意しました。韓国はこの他に、ハイテク爆弾のJDAM(統合直接攻撃弾)、JASSM(統合空対地スタンドオフ・ミサイル)、GBU-24の購入も計画しています。

 JDAMは自由落下型の爆弾につけるアダプタで、慣性式とGPS式の誘導装置と可動翼による誘導で爆弾を従来の自由落下式よりもずっと正確に爆撃できるピンポイント爆撃用の兵器です。JDAMは事前に入力した目標に向けて自由落下するだけでなく、誘導装置によって自身の位置を正確に認識し、照準点へ正確に落下するように翼を動かして落下軌道をより正確に調整します。JASSMは航空機から発射できる小型の巡航ミサイルで、地下施設も攻撃できます。JDAMは目標近くの上空から攻撃しますが、JASSMは巡航ミサイルなので、数百kmの遠方から発射し、数メートルの誤差だけで目標に命中します。射程が長いので接近しにくい内陸部の目標も攻撃できる利点があります。GBU-24はJDAMと同じ誘導装置がついた自由落下型の爆弾ですが、レーザー誘導装置を搭載しており、より正確で低高度の爆撃を可能にするほか、弾頭にはGBU-28よりは貫通力が弱いもののバンカーバスター爆弾も選択できます。これらは北朝鮮の核施設、弾道ミサイル及びランチャー、榴弾砲、弾薬類などの地下格納庫を攻撃するのに使います。こうした兵器が大量に韓国に配備されれば、北朝鮮は弾道ミサイル戦略に大きな変更を強いられます。また、グローバルホーク自体には攻撃能力はないものの、要人の居場所を突き止めて巡航ミサイルを発射することで暗殺にも使えるので、北朝鮮のVIPは居場所を一層秘匿する必要があります。

 spacewar.comの別の記事によると、在韓米軍副司令官のジェフリー・レミントン中将(Lieutenant General Jeffrey Remington)は、東亜日報のインタビューに答えて、米軍の旧式のU-2偵察機を引退させ、かわりにグローバルホークを配備する意向を明らかにしました。さらに、韓国軍もグローバルホークを購入すべきだとも述べました。

 アメリカは先月、韓国にグローバルホークを売却する意向を表明していましたが、韓国側が消極的だと報じられていました(記事はこちら)。先に紹介した兵器を運用するには、目標の位置を正確に知る必要があります。グローバルホークはそのために使えます。このため、韓国はグローバルホークの導入に前向きになるのではないかと想像します。グローバルホークは戦争になってから使うというよりは、戦争に至る前に敵国の軍事施設を偵察し、開戦と同時に一気に砲爆撃を行うために用います。北朝鮮にはこのような迅速な作戦は不可能で、韓国軍にとっては大きなアドバンテージになります。アメリカは何とかして韓国にグローバルホークを導入させるため、在韓米軍への導入を決めたのでしょう。自民党の国防部会防衛政策検討小委員会は、政府が年末に改定する「防衛計画の大綱」への提言案をまとめましたが、その中で海上発射型巡航ミサイルの導入を提案していると報じられています。巡航ミサイルだけ導入しても意味がありません。北朝鮮から遠い日本が敵地攻撃能力を持つには、無人偵察機を発着させ、巡航ミサイルを発射する艦船を持ち、日本海上から北朝鮮を偵察・攻撃する必要があるのです。

 なお、東亜日報によれば、北朝鮮にとって不幸なことに、未だに、核爆発の証拠となるクリプトン(Kr-85)やキセノン(Xe-135)などが確認されず、核実験に成功したと認定されていません。あまりにも核爆発の規模が小さく、核物質が大気中に放出されていないという意見の他、通常爆薬による偽装実験だったという声が出ているとのことです。前回も核爆発の確認が取れるまでは、かなりの時間がかかりましたから、今回ものんびり待った方がよさそうです。

 ところで、現在の北朝鮮の行き過ぎた恫喝外交は、後継者・金正雲の立場を少しでも有利にするため、金正日が計画したものかも知れません。そうだとすると、北朝鮮にはまだ余裕があるのかも知れません。しかし、この目論見は必ず失敗し、北朝鮮は何も得られないで終わるでしょう。


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