イラクの上官殺し裁判が難航

2009.7.11



 military.comによると、米陸軍のジョセフ・ボジセビッチ3等軍曹(Sgt. Joseph Bozicevich)が自分の分隊長ダリス・ドーソン2等軍曹(Staff Sgt. Darris Dawson)とウェズレー・ダービン3等軍曹(Sgt. Wesley Durbin)を殺害した件で死刑になる可能性に直面しています。

 ボジセビッチ3等軍曹は昨年9月14日深夜、イラクのバグダッドの南にあるイラク軍との合同パトロール基地で、2人が彼の低い能力について助言しようとした時に発砲を始めました。ボジセビッチの弁護士は、聴聞会で彼が自分を守るために発砲したと述べましたが、何が彼を怖がらせたのかについては言いませんでした。ボジセビッチの部隊の隊員たちは、発砲音で目覚め、現場に駆けつけ、ドーソンが逃げているのを目撃しました。ドーソンが出血し、致命傷を負って倒れた時、ボジセビッチはドーソンの上に立っていたところを同僚に取り囲まれました。ドーソンは首と胸を撃たれており、野戦病院で死亡しました。基地内では銃に弾丸を装填することは禁じられていますが、事件が起きた時、3人の当事者すべてが武装していたという証言が出ています。この小隊の指揮官ライアン・デイリー中尉(1st Lt. Ryan Daly)は、事件の前日の徒歩パトロールで、1名の兵士(ボジセビッチのことか?)を外した後、ドーソンがボジセビッチを徒歩パトロールから外そうとしたと証言しました。ボジセビッチは以前に手榴弾を紛失するという問題を引き起こしており、ダービンはボジセビッチのかわりに一時的に4人のチームを率いることになっていました。有罪の場合、ボジセビッチは死刑になる可能性があり、そうでなくても終身刑になるのは確実です。ドーソンの義理の母親は、死刑を望まず、ボジセビッチが刑務所に送られれば満足だとコメントしています。

 この事件は発生から聴聞会までの時間がかかりすぎている点が不思議です。事前の捜査にこれだけの時間がかかり、4月に予備審問が行われた事件の裁判の開始期日がまだ決まっていません。目撃者もおり、ボジセビッチが犯行を行ったこともはっきりしています。おそらく、問題は事件が起きた背景にあります。記事には上官が部下に注意をしようとしたと書かれていますが、これはおそらく小隊長の証言から導かれる推測なのです。弁護士が言う「ボジセビッチが恐れたもの」が、当人が証言しないために明確になっていないのだろうと思われます。殺人事件では動機の解明が不可欠ですが、それが完全に説明できないのが、裁判を遅らせているのでしょう。それにしても、加害者と被害者の両方が武装していた点が引っかかります。よほどの問題がボジセビッチにあって、上官たちが用心したということでしょうか。



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