テロ警報のカラーコードが廃止か?

2009.7.16



 対テロ戦争の象徴のひとつで、有害だと批判され続けてきた多色型の危機レベル警報システム(下図)を国土安全保障省が見直し、置き換えようとしているとmilitary.comが報じました。


 このシステムは単純で、危機の度合いを「赤」から「緑」の5段階で示す仕掛けです。2002年に作られて以来、このシステムは、異なるカテゴリーを異なる色に割り振るのは、有益な情報を提供する方法としては曖昧すぎると批判されてきました。また、深夜テレビのアニメで嘲笑の対象にされてきました。国土安全保障省長官ジャネット・ナポリターノ(Janet Napolitano)は特別委員会に60日間で、このコードの有益性を再評価するよう指示しました。特別委員会は、民主党と共和党からなる17人で構成され、前FBI長官ウィリアム・ウェブスター(William Webster)と前国安全保障担当補佐官フラン・タウンゼンド(Fran Townsend)が議長を務めます。この件について、国土安全保障省は電子メールでパブリックコメントも受け付けるとしています。

 やれやれ、ようやくブッシュ政権の愚行の一つがなくなるようです。国土安全保障省のウェブサイトには、このカラーコードがどのように設定されてきたかが一覧表で示されています。2002年3月12日に発表以来、このコードは16回変更されました。最初は「黄色」でしたが、同年9月10日に「オレンジ色」に変えられました。これは9月11日に合わせて、アルカイダが米国内でテロ事件を起こそうとしているという情報に基づいていたと書かれています。

 このカラーコードはブッシュ政権を厳しく批判した映画「華氏911」にも登場します。民主党下院議員で精神科医のマクダーモット氏が、このカラーコードを批判するインタビューシーンがあります。マクダーモット氏は「(カラーコードは)緑や青までは絶対に下げないはずだ」と言い、ブッシュ政権は国民を怖がらせ続けるだろうと指摘しています。国土安全保障省のウェブサイトには、2006年8月13日までのカラーコードの記録が載っています。この日、「オレンジ色」から「黄色」に戻って、その後は変化がないというわけです。「緑」または「青」になったことは一度もありません。マクダーモット氏は、「犬にお座りとお手を同時に指示すれば混乱します。国民もそのように扱われています」とも述べています。

 世の中はこんなものなのです。「専門的が考えたことなのだから、間違いはないのだろう」などとは思うべきではありません。自分の頭で考えて納得がいかなければ信じない方が賢明なのです。


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