北朝鮮の南進は破壊的だが失敗する

2009.7.16



 spacewar.comによると、職を去る在韓米軍の幕僚副長ジョニー・A・ウェイダ少将(Major General Johnny A. Weida)が、北朝鮮による韓国の攻撃は、突然に行われ、非常に破壊的だけども、究極的には失敗するだろうと述べました。

 北朝鮮軍の3分の2以上は韓国の国境から90km以内にいるとウェイダ少将は述べます。「彼らがそうしようとするなら、ごく僅かな予告だけで実行できます。彼らの失敗した経済と、ロシアや中国のような伝統的な支援国が限られているため、彼らは第一次朝鮮戦争でやったような大規模な攻勢を維持することはできないというのが、我々の評価です。彼(金正日)が誤算して、韓国を攻撃するなら、彼と彼の政権は終わりです。こうした攻勢を起こすのは、金正日は生きようと望んでいるので、まったくありそうにないことです」。少将の発言は聯合ニュースによって報じられ、米軍広報官により確証されました。

 この見解に特に異論を唱える余地はありません。北朝鮮がいまにも韓国に向けて進撃しようとすると信じている人がいますが、北朝鮮の攻勢は長続きはしません。大量の砲とミサイルにより、38度線やソウルは壊滅的な打撃を受けるでしょうが、北朝鮮軍が大軍を送り込めるかは疑問です。なにより、戦争を続けるための補給物資が北朝鮮に十分にあるかという問題があります。1950〜1953年の朝鮮戦争では、北朝鮮にはソ連の支援があり、そのためにあと一歩で韓国を占領するところでした。当時、朝鮮半島に米軍の軍事顧問はいたものの、装甲車数両があるだけで、戦力らしい戦力はなかったのです。米軍は次々と部隊を投入しましたが、北朝鮮軍に撃破され続けました。しかし、現在は38度線内と後方に、防衛拠点が多数設けられ、北朝鮮軍の進撃を拒みます。それらに対応している内に北朝鮮軍は消耗してしまいます。特に、北朝鮮軍には地上戦を支援する空軍がないため、韓国軍の後方部隊を攻撃するのは困難です。逆に韓国軍と米軍は北朝鮮軍の砲兵部隊や軍のインフラ、政治の中枢を攻撃できます。移動式のミサイルランチャーを攻撃するのは困難ですが、無人偵察攻撃機が将来的に導入されると、多少は反撃できるでしょう。

 また、金正日が重病の中、体制の存続を賭けた戦いはしないと考えるのも妥当です。自分の息子が権力の座に就いたばかりなのに、それを危険にさらすことはできないのは親心というものです。権力継承後も当面は政治的な不安定が続くため、大きな戦争をすることはできないでしょう。

 韓国の人たちは、北朝鮮には南進するような国力はすでにないという認識が定着しています。これは当然のことなのです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.