spacewar.comによれば、韓国のシンクタンク「韓国開発研究院(The Korea Development Institute)」が、北朝鮮は、核兵器に関する国際的な緊張と、金正日の健康の不確実性のため、この15年間で最悪の危機に直面しているという報告書を発表しました。(報告書のpdfファイルはこちら)
韓国開発研究院は、核開発問題でのいかなる前進も、北朝鮮が核装備した国として扱われるよう強く求めているため困難だとしています。北朝鮮は国民に提供する食糧が十分なく、紛争が解決しなければ今年後半に経済が縮小するでしょう。穀物生産量は、513万トンが必要なところ、約429万トンに留まると予測されています。自由市場の抑制強化と、150日間運動が経済活動を妨げており、これらの抑制が国外の経済関係における不振と一致する時、すべての負担が大衆の肩の上に落ちるでしょう。これらの要素が統合されると、北朝鮮が対面している現在の困難は、金日成が死に、核危機が引き起こされた1994年の状況に遡って比較できるでしょうと、報告書は書いています。
「1994年の状況」とは、ノドンミサイル発射に始まる核問題に関する顛末を指します。1993年5月29日にノドンミサイルが日本海に向けて発射され、6月11日にはアメリカと北朝鮮の間で米朝共同声明が発表されました。この時は北朝鮮は核拡散防止条約を守ると宣言しました。アメリカはその見返りとして、1994年10月21日に米朝枠組み合意によって北朝鮮へ軽水炉を提供することを約束しました。北朝鮮は黒鉛減速炉を保有しており、この原発からはプルトニウムが生成されます。このプルトニウムは核爆弾に利用できます。もし、ノドンミサイルに核爆弾を搭載できれば、北朝鮮は外国を核攻撃できることになり、アメリカが中心となって北朝鮮に黒鉛減速炉を放棄して、核兵器転用に向いたプルトニウムを生成しない軽水炉を日本も含む各国が費用を負担して、北朝鮮に無償で提供することになったのです。この交渉は難航し、工期が著しく遅れ、1994年に金日成が死去したこともあり、北朝鮮は韓国に侵攻する振りをしてみせました。この経緯は映画「JSA」の中でも軽く触れられています。
米朝枠組み合意を進めたのは、当時のクリントン政権です。現在、同政権の大統領ビル・クリントンの妻ヒラリー・クリントンが国務長官を務めています。今日報道されたように、ヒラリー氏は北朝鮮を「小さい子供や手に負えない十代の若者」と同じで、常に大人の気をひこうとしていると批判しました。この一見感情的に聞こえる発言は、決してパーティ向けのジョークや、思いついたのでちょっと言ってみたわけではなく、当時のことを踏まえて北朝鮮に対して明確なメッセージを送っているのです。つまり、1994年のような状況を北朝鮮に作らせないための予防線です。テポドン2号の打ち上げ準備がまったく進んでいないことや世襲問題、金正日の健康問題で北朝鮮が強気に出られないことから、ここで一度脅かして、流れを有利にしようということです。これは、最新情報から見て、北朝鮮に大規模な軍事作戦が行えそうにないとアメリカが見ていることも暗示されます。アメリカはクリントン政権、ブッシュ政権共に北朝鮮に見返りを与える方法であたってきました。オバマ政権がそれをしないことは明確で、それを北朝鮮に分からせるための発言です。近いうちに、北朝鮮からこれに対するリアクションが出てくるはずです。我々はそこに注目する必要があります。