military.comによれば、ソマリアの海賊に対処するため、商船に武装した兵士を配備する国が増えています。
船を武装することには国際的な反感がありますが、フランスはインド洋上のマグロ漁船に兵士を配備し、ベルギーはアフリカの角の沖を通行する商船に部隊を提供しています。アメリカも同様の行動を検討しており、米下院は危険な水域を航行する船に兵を配備する法案を通過させました。国際運輸労働組合連盟(the International Transport Workers' Federation)の代表サム・ドーソン(Sam Dawson)は、船乗りには作業と見張りが仕事の大部分であり、演習や武器の取り扱いや使用は任務にほど遠いといいます。世界中に船員を提供しているフィリピンは船員を守る資産を提供できません。歴史的に、反乱に用いられることを恐れて、船には武器は積み込まれていません。海運と保険の業界は、この措置は海賊に軍備競争を引き起こすとして反対しています。一部の商船は警備員を乗船させ、イスラエルの商船は武器を搭載していると信じられています。「Terror on the Seas: True Tales of Modern Day Pirates.」の著者ダニエル・セクリッチ(Daniel Sekulich)は、アメリカがすることは世界的な海運業界をリードすることはなく、国連国際海事機構(the U.N. International Maritime Organization)が国際的な傾向を定着させるだろうと述べました。また、裕福な国の船が武装すれば、海賊は貧しい国の船を狙うようになるともいいます。海賊がより強力な武器を持つこととを恐れて、オランダ政府は船に海兵隊員を乗せる議会の請願を拒否しました。これは海賊がより暴力的な反応をすることと、負傷した海兵隊員が洋上で治療を受けられないことを恐れたものです。ベルギーは5月初旬に少なくとも8人の兵士を商船に週あたり115,000 ユーロ(162,000ドル)で派遣することを決めましたが、今のところ申し出は1件だけでした。フランスはインド洋上のマグロ漁船を保護することで組合と協定を結びましたが、今のところ襲撃は行われていません。国際海事局(the International Maritime Bureau)によれば、今年は昨年の同じ時期に比べて海賊の攻撃が114件から240件に増加しています。
ソマリアの海賊は小火器しか持たず、小型の貧弱なスキフに乗っています。これを攻撃して撃沈することは難しくありません。海軍にとって、どうということはない敵です。しかし、出没する海域が広大なので、海軍力では完全に警備することができないのが問題です。この記事を見る限り、民間軍事会社の警備員はあまり活用されていないようです。ベルギー軍の警備費用も高いと感じますが、民間軍事会社はもっと高いのかも知れません。武装兵士を乗り込ませる方法に問題があるとすれば、最終的には商船は集団航行させ、それに護衛船が随行するしか手がなさそうです。しかし、これは海運の能率を悪くすると考えられます。以前に、襲撃される船は入港中に使うハシゴを撤去せずに航行し、海賊はハシゴを使って船内に乗り込んでいるという問題が指摘されました。こうした海運業界の悪習が事件を招いている部分は大きく、現在でも武器を船内におけない理由が船員の反乱防止のためだというのでは話になりません。海運業界はもっと改善する方向で動くべきです。しかし、海運業界の厳しい状況は、船員に対する十分な手当を不可能にしている面があります。ソマリアの海賊はそうした業界の隙間に生きているともいえます。地上で海賊を攻撃する方法現実的とはみられていません。海軍が派遣されているのに海賊の攻撃が増えている現状は、状況を詳細に調べてみないと分かりません。報じられている程度の情報では不足です。商船の航行と海賊の出没を海図上で再現し、有効な戦術を考え出すしかありません。そうした検討が行われているのかどうかは不明です。
余談ですが、この記事(下記の部分)には海賊対策でパトロールしている国に日本を含めていません。海賊対処から帰国したばかりの護衛艦「さみだれ」「さざなみ」の隊員がどう感じるかが気になるところです。私自身はこうしたことは必ずしも問題だとは考えていません。日本と軍備が結びつけられないのは悪いことだとは思わないからです。
International patrols, including U.S., European, Chinese, Russian and Indian ships, have reduced the success rate of Somali attacks.