北朝鮮がテポドン2基を発射施設に搬入しながらも、発射しようとしない理由について考えます。この推察は、グローバル・セキュリティのチャールズ・ビック氏の推論を参考にしています。
2006年に北朝鮮がテポドン2号打ち上げに失敗したのは、1段機体のジンバル装置に不具合があったためと推察されています。この改修は当然ながら時間がかかり、今年になるまで打ち上げは延期されました。4月の打ち上げでは、3段機体の制御ブースターが点火しなかったことが確認されており、3段機体に何らかの欠陥があったことが推察されます。この問題を解決するのには、少なくとも半年程度の期間が必要とされています。つまり、発射施設に搬入された2基のテポドン2号は、このまま打ち上げても同じ問題を起こすはずなのです。「ダメでモトモト」で費用のかかるロケットを打ち上げる国はありません。また、ロケットは打ち上げテストを行い、問題点を直して、次のロケットを打ち上げるのが普通であり、開発済みのロケットでない限り、短期間に連続して打ち上げる意味はありません。すると、何のために2基の打ち上げ準備を進めているのかというと、アメリカを交渉の座につけるための欺瞞工作だろうとビック氏は推論し、欺瞞工作は北朝鮮の基本的な作戦だと述べています。私もこの説明が最も合理的だと考えています。クリントン国務長官は、こういう北朝鮮の態度を踏まえて、徹底した無視戦略に出ているわけです。テポドン2号の次の打ち上げは、早くても今年の秋であり、準備にかかれば10日間程度の短期間で打ち上げられるはずです。制御ロケットの実験は小規模です。偵察衛星では確認されないでしょうから、改修の進展具合はおそらくつかめないでしょう。2基を同時に打ち上げるとは考えにくく、おそらく1基だけを打ち上げるだろうと、私は考えます。打ち上げ場所も舞水端里の方が可能性が高いといえます。まずは、軌道傾斜角のある実験衛星の打ち上げに成功しないと、東倉里から発射する極軌道衛星も安心して打ち上げられません。こうして北朝鮮は金が続く限り、ロケット開発を進めようとします。たとえ、日本が核装備したところで、北朝鮮はロケット開発を止めようとしないでしょう。