タリバンの戦闘ルールと現実の違い

2009.8.3



 spacewar.comによれば、先月NATO軍が押収したタリバンの戦闘ルール書と現実はまったく違っていると、ISAFが主張しました。

 タリバンの戦闘ルール書は、自爆攻撃を重要性の高い目標だけに限定し、住民の被害を避けることを指示していました。カナダ軍のISAF広報官、エリック・トレンブレイ准将(Brig. Gen. Eric Tremblay)は、1月以降、タリバンは450人の無辜の民を殺し、1,000人以上を負傷させていると言います。同じ時期には、90回を超える自爆攻撃が、多くは十代の青少年や子供によって行われ、200人以上の市民を殺害しました。また、武装勢力は40カ所以上の学校を攻撃対象にして、女性が教育を受けるのを妨害し続けているといいます。

 この戦闘ルール書は5月9日の日付だということなので、まだ努力の結果が数字になっていないということもできます。米軍の増派の結果も、まだ明確な数字にはなっていません。でも、今後のタリバンの動向を見る上で、この記事は記憶に留めておく価値があります。

 ところで、産経新聞が「アフガン情勢好転せず、多国籍軍の死者最多 イラクの二の舞?」というピントのはずれた記事を掲載しています。7月に戦死者が増えたのは米軍などがヘルマンド州で攻勢に出たからで、当たり前の話です。今後も増え続けるのなら問題ですが、この数字は最悪の状況を示すものではありません。状況がどうあれ、米軍はアフガンから3年くらいで撤退する方向で動いています。産経新聞の記事は、そのことをまったく分かっていません。日本の新聞の軍事記事はほとんどの場合、あてになりません。そのことに気がつくのが、私の軍事分析の第一歩であったことを思い出します(それにしても、随分と以前の話ですが…)。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.