アフガン戦の補給路と防弾ベストの問題

2009.9.11



 アフガニスタン・パキスタン戦の戦況に関するニュースをふたつ紹介します。military.comによれば、パキスタンはアフガン国境沿いの道路を閉鎖しました(記事はこちら)。この道路は米軍とNATO軍の2番目に大きな補給路です。また、別の記事によると、アフガンのヘルマンド州に派遣されている米軍は、防弾ベストの必要条件を緩和しました(記事はこちら)。

 パキスタンはアフガンのバルチスタン州(Baluchistan province)のチャマン(Chaman・ kmzファイル)の国境を封鎖しました。トラック運転手が点検のために積み荷を降ろすのを拒否したあとで、パキスタンの国境警備員が国境を閉鎖しました。パキスタンはアフガンからパキスタンへ武器の密輸が行われていると主張しています。国境の閉鎖はこの2週間で2回目です。タリバンは8月30日にNATOの輸送隊を襲撃し、25台のタンクローリーを破壊したためにチャマン国境は閉鎖されました。同じ日、南のクェッタ(Quetta・kmzファイル)でNATOの輸送隊を攻撃し、タンクローリー8台を破壊しました。チャマンはアフガンとパキスタンを結ぶ、2番目に大きいNATOの補給路です。カラチからクウェッタとチャマンを通り、カンダハルへ到達します。最大の補給路はペシャワールからカイバルのトーカム町のゲート(Torkham Gate)を通ってアフガンの首都カブールへ通じるルートです。このルートは1年間で7回閉鎖されました。

 ヘルマンド州で活動する海兵隊員は任務の90%を徒歩で移動しています。防弾ベストを装着していると、温度は華氏130度(摂氏54.4度)にも達します。1年前、海兵隊はイーグル・インダストリーズ社の軽量のSPCベストに変更したばかりですが、ヘルマンド州の灼熱の中ではさらなる改良が必要になりました。防弾プレートはそのままですが、扱いにくいネック・ガードと股のプロテクタは外しても構いません。この決定は徒歩の任務の場合に限られます。

 アフガンへの補給路は常に安定していません。この問題はまず解決されないでしょう。こうした中で米軍やNATO軍は任務を遂行しているわけです。太平洋戦争で日本軍が米海軍の潜水艦攻撃で島々との連絡が絶たれたのに似ています。このように、戦争は用意した人材・物資の多くは使われる前に灰になり、前線に到着したものだけで勝敗が争われます。つまり、戦争では戦力となる人材・物資が使われる場所に、必要な時にできるだけ多く運ばれる必要があります。これが「戦力の集中」ということなのです。これができない戦争は勝つことが難しく、つまり行うべきではないということになります。逆に、敵の戦力集中をどうやって減じるかも重要です。戦争に関して、こうした問題を取り上げず、別の話ばかりする人の話は疑った方が賢明です。

 防弾ダベストの問題は、対テロ戦争以降、何度も取り上げられてきました。防弾性能に関しては米議会も問題視しましたし、テレビドラマ「ネイビーファイル」でも扱われたほどです。今度は熱が問題となっているわけです。ところで、任務の9割を徒歩移動しているということは、宿営地の近くしか出歩いていないことが推測されます。まさか、ベトナム戦争のように長期間、歩兵が野宿しながら掃討活動を継続するわけではないでしょう(特殊部隊等は別です)。海兵隊は人口密集地を集中的に警備しているのかも知れません。


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