アフガンの抑留者に提訴権が認められる

2009.9.15



 military.comによれば、米国防総省はアフガニスタンで軍によって拘束されている数百人の抑留者が、拘留に対して訴えを起こすプログラムを始めようとしています。

 軍の将校が抑留者の人格代表者(personal representative)を務め、新しく設置される抑留者審査委員会(Detainee Review Boards)に先行して、抑留者の事案を検討するチャンスが抑留者に与えられることになります。アフガンのバグラム基地には、約600人の抑留者がおり、最も長く囚われている抑留者は6年間も収監され続けています。この新方針はオバマ政権はブッシュ政権の政策を再検討した結果、打ち出されました。この規則は60日間の審議のために7月中旬に米議会に提出されました。審査委員会を作る命令はウィリアム・リン国防総省副長官(Deputy Defense Secretary William Lynn)によって、7月に署名されました。この規定により、軍が割り当てた代表者は弁護士ではありませんが、証拠を集めたり、証人を呼ぶ任務を行います。この制度はグアンタナモベイのそれに酷似していますが、米軍当局者はイラクのそれにより似ていると言います。イラクでは審査委員会は、抑留者が大きな脅威になるか、更正させた釈放できるかを識別し、抑留者の人数を管理したり、減らすのに使われました。

 一歩前進ではありますが、気になるところはあります。人格代表者に弁護士ではない者が割り当てられていることから、軍があまり本気でやる気はないことは明白です。記事には、ニューヨーク市立大学の法学教授で、バグラムの抑留者の一人の弁護士を務めるラムジー・カッセン(Ramzi Kassem)の厳しいコメントが紹介されています。彼は、この動きが「ショーウィンドウの飾り付け」だと批判します。「すべては裁判システムの目の上にウールを被せることを意図しています」「この変更はとても本当の審査の適切な代用とは言えません」「これらの改良はまったく巧妙なトリック(smoke and mirrors)です」。

 軍の法務部の法務官が弁護を担当する場合、彼らは軍の圧力を受けずに活動できます。東京裁判でも、米軍が派遣した弁護士の弁論は非常に強力でした。しかし、一般の隊員にはそうした特権はありません。カッセン教授はそのことを指摘したいのでしょう。アメリカは明らかに抑留者の待遇を決めかねているのです。昨日紹介したように、女性や子供が武装勢力に弾薬を運搬することは珍しくありません。彼らを爆撃した結果、弾薬を運んだ女性と子供が死んだ場合でも、民間人に犠牲が出たと批判されることになります。ベトナム、イラク、アフガンのように、民間人が現地の武装組織に協力する地域で戦争をする場合、こうした事態が起きるのです。こういうわけなので、現地人を抑留した場合の待遇が、基本的人権の基準に則って行われるわけがありません。かつて、日本軍も中国大陸で似た状況に陥ったことを考えると、これはもう戦争の定石と考えるべきです。そんなことは起こらないのだと主張する人がいたら、その人の話は聞かない方が賢明なのです。


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