military.comによれば、これまで不評続きだった米陸軍の迷彩服が変更されることになりました。来月、アフガニスタンに駐留する2個大隊に新型の制服が支給されます。
トーンを弱めた灰色と緑色を用いる現行の多環境対応共通迷彩パターン(Multi-environment Universal Camouflage Pattern)はアフガン東部の砂漠、岩だらけの峰、木が茂る谷では目立つという批判が兵士から出ていました。新しい迷彩服は、クライ・プレシジョン社(the Crye Precision)が製造し、「MultiCam」で、迷彩パターンはナティック・ソルジャー・システムズ・センター(the Natick Soldier Systems Center)がデザインしました。「MultiCam」は数年前にデザインされ、陸軍と空軍の特殊作戦部隊で高い人気を持っています。陸軍広報官ピーター・フラー准将(Brig. Gen. Peter Fuller)は、「我々は逸話の情報を取り扱おうとしません。誰かが何かを身につけているかも知れないというだけでは、それがすべての環境で最高だということにはなりません」と述べました。
現行の迷彩服が不評なのは2007年頃からかなり強く言われていて、military.comに載った記事をここで紹介したことがありました(記事はこちら)。2009年になってようやく改良されることになったわけです。フラー准将の発言は明らかに、この問題について述べたくない態度を示しています。M4小銃問題と同じで、軍は自らの選択の誤りを積極的に認めたくないわけで、こういう軍の性質は軍事を考える上で知っておくべきことです。記事には、実は米軍はいくつもの迷彩パターンの効果を調査したレポートを作成しており、Army Timesが最初に入手して、「Defense Tech」に掲載されています。カラー写真付きのレポート全文も読むことができます(レポートはこちら)。このレポートは「陸軍指導部が戦闘任務用に単一の多環境対応迷彩パターンを維持しようと望むなら、この評価から得たデータはMultiCamの迷彩パターンが総合的に最良で、容易に入手できるパターンであることを示しています。」と結論しています。
アメリカは軍の欠陥装備に対して非常に厳格な国で、それは国防長官の首を飛ばすほどのパワーを持っています。米議会は欠陥装備の疑いが浮上すると議会の国防委員会で審議します。それでも、軍部の激しい抵抗がある場合もあります。軍は厳しいテストを経て新装備の選択を決定しているわけで、それを簡単にひっくり返されては威厳に関わるわけです。不満は最初に最前線の下級兵士の間で起こり、それにマスコミや議会が着目するわけで、軍の中で最も技術に秀でた人たちの判断が誤っていたとされるのですから、軍は簡単に同意するわけにはいかないのです。日本は主要な装備の購入は防衛省内で決まり、政治側は閣議で承認したら、あとは専門家に丸投げです。日本は平和国家なのだから、日本に軍隊は存在せず、従って、議会で自衛隊の兵器の性能について議論することは、憲法論争の場合を除いては起こらないというわけです。これは逆に防衛産業界に対する監視の目を緩めることになった、と私は考えます。新政権になったのだから、こういう悪癖を政治主導で正していく手法も必要です。
一方、対テロ戦以降、装備品に関する問題が何件も浮上してきました。M4小銃の威力が弱すぎる件。装甲車のIEDに対する脆弱性はMRAPの導入を招きました。しかし、装備品の欠陥を正しても、戦況には大した変化がないことに注目してください。軍事雑誌などには事細かく兵器の性能が紹介されますが、多くの場合で、それらは戦況を見る上に影響はありません。よほど大きな技術革新がない限り、兵器の性能は戦況に影響しないのです。また、機密保持のために兵器の重要部分の情報は伏せられている場合もあり、一般人が知ることができる兵器の性能は、常に靴の上から足を掻くようなものです。戦況悪化に対する不満が、こうした装備品の不備に向けられがちという心理上の特性も理解する必要があります。