military.comによれば、米軍と議会指導者からオバマ大統領に対して、アフガニスタンへの増派を許可するよう要請が出されています。
国防総省と米議会の批判者は、ホワイトハウスはこの数ヶ月間、米兵の致命度を増している戦いから目を逸らす危険の中にいると言います。彼らはオバマ大統領にマクリスタル大将の要請を実現するよう求めています。下院の軍事委員長アイク・スケルトン(Ike Skelton)は、大統領宛の手紙で「あなたが我らの指揮官と民間人の指導者に明確な指示を、彼らの任務を達成するのに必要な資源と共に与えることにおいて時間を浪費しないように求めます」と書きました。スケルトン議員は民主党員で最も強く増派を指示する議員です。彼は、ブッシュ政権がイラクで戦うことを選択したために、アフガンからアメリカの目が逸らされたのだから、その誤りを正すためにアフガンに資源を集中すべきだと考えています。増派を指示するジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)は「私は問題に関して、軍指導者とホワイトハウスの間にこのような断絶を見たことがない」と述べました。キット・ボンド上院議員(Sen. Kit Bond)がちょっと面白いことを言っています。「いま、オバマ大統領は買い手の後悔(buyer's remorse)になっているのです」「議会は、ここワシントンでの政治的モチベーションが我々の指揮官の要求を越えないことを確実とするために、直接マクリスタル大将から話を聞く必要があります」。「買い手の後悔」とは、大きな買い物をした後のちょっとブラックな気分のことです。もちろん、キット上院議員も増派の賛成派です。
別のmilitary.comの記事によると、戦略的国際研究センターのホァン・カルロス・ラザティ(Juan Carlos Zarate)は「ワシントンやニューヨークのストリートに対する脅威ついて言うならば、それはアフガンからは起こりません。それはパキスタンから起こります」と述べています。保守系コラムニスト、ジョージ・ウィル(George Will)は、「アメリカ人は沖合から、諜報、無人偵察機、巡航ミサイル、空爆、小規模で効果がある特殊部隊を使い、本当に重要な国パキスタンとの1,500マイルの通過可能な国境線に集中し、できることだけをすべきです」「天才は止める時を知っています」と書いています。ゲーツ国防長官はウィルに敬意を持っていると述べていますが、純粋に対テロ戦だけを行い、遠距離からそれを行うという考えは現実と一致しないとも述べています。
21日に米軍は苛々すべきでないと書きましたが、ついには議会も巻き込んで政府全体が苛々し始めたようです。これは典型的な「愛国者シンドローム」というべきで、「買い手の後悔」よりも、大がかりで厄介な心理状況です。「愛国者シンドローム」は、特に軍事的な根拠もないのに、感情が優先して非合理・非効率な選択をしたり、行為を行うことを指す、私の造語です。現地の指揮官が増派を求めているのに、最高指揮官の大統領がそれを承認しないなんて、と憤慨するのは当然のように思えますが、そう考える前に、軍事的な分析をしたかを考えるべきです。スケルトン下院議員の意見は、一見軍事的分析に基づいているようですが、もともとアフガン戦も成功する可能性が低いことを忘れています。戦争は正しい方法を選択すれば勝てるというものではなく、なにをやっても成果が得られない場合もあることを知るべきです。アルカイダを討伐すれば済むのなら話はまだ簡単ですが、タリバンという現地人と強い関係を持つ武装組織がいて、彼らも敵になりました。簡単だと言っても、アルカイダは侵入しがたい地域に潜伏しており、何年も無人偵察機で探しているのにビンラディンの居場所は分かっていません。私が同時多発テロの直後に考えたのは、アフガンには特殊作戦用の部隊を送り、アルカイダの掃討に限って作戦を行い、アフガンそのものにはできるだけタッチしない作戦でした。米軍には優れた将校が大勢いるはずで、道を誤るとは考えていませんでしたが、事態は予想を大きく裏切りました。しかし、私が考えた方法でも、何らかのチャンスがないと勝利は得られないのです。
増派に関して、タリバンの勢力に対する正しい査定とアフガン軍・警察の能力に関して、もっと詳しい情報が常時報じられていればよかったのですが、それは機密情報にタッチできない民間人が判断をくだすには不十分でした。たとえば、military.comが、北部に配備されたドイツ軍に対する攻撃が激化している様子を伝えています。攻撃の激化に応じて交戦規定が変更されたのは6月でした。それが今になって報じられているのですから、とても情報が即時性を持って報じられているとは言えません。正直なところ、増派の是非について確信を持って結論を出すことはできません。しかし、曖昧ながらも想像できるのは、増派しなくても結果はそれほど変わらないだろうということです。