オバマ大統領が増派の是非を検討中

2009.9.3



 2日付けのmilitary.comによれば、スタンリー・マクリスタル大将(Gen. Stanley A. McChrystal)はアフガニスタン戦の査定を完成し、NATOと米軍に発送しました。3日付けのmilitary.comは、オバマ大統領が休暇を過ごすキャンプ・デービッドに、この書類を持っていったと報じました。

 大統領がこの査定について判断をくだしたかや、その内容については不明です。ホワイトハウスの当局者が匿名でオバマ大統領の懸念について述べていますが、5項目について検討が行われているようです。

  1. アフガニスタン、アメリカ、NATOの連合がどのように兵力を増強するか。
  2. アルカイダの宣伝と戦術が兵力の変化にどのように対処するか。
  3. ビンラディンを含むアルカイダの指導者がいる核戦力を持つ隣国パキスタンにもたらす変化は何か。
  4. すでに度重なるイラクとアフガンへの派遣で緊張している米軍の健全度への影響。
  5. 増派がアフガンとパキスタンのアルカイダ・タリバン連合の隠れ家を拒むオバマ大統領の目標にどのように効果的か。

 マクリスタル大将の査定の書面は20〜25ページだったといいますから、この程度の報告書としては常識的な範囲です。オバマ大統領にとって、今回の決断は大統領としてアフガン戦に対する本格的な決断となります。

 私が予測するのは、少数の部隊を派遣し、これ以上の増派は行わないという選択肢です。以前から私はここで主張していますが、米軍をいくら増強してもアフガンの治安を安定させることはできません。アフガンの警察と軍を増強して治安を任せ、多少治安が不安定だとしても目的を達成したと宣言して、不必要な部隊を撤退させるのです。そして、軍事行動の中心はアルカイダ掃討に集中します。もともと、オバマ大統領はこういう軍事活動をやりたいと選挙時に述べていました。これはアルカイダを軍隊と考えた場合の戦略です。ここで一つ心配なのは、アルカイダが極めて柔軟なテロ組織で、たとえビンラディンを殺害しても、別の者が指導者に立って活動を続ける可能性があることです。アルカイダが結成されてかなり経つのに、その組織の内情はほとんど分かりません。仮にパキスタンにいるアルカイダを全滅させても、別の地域で誰かが新しい指導者になり、アルカイダとして活動する可能性すらあります。こうなると、アルカイダは新しい時代を迎え、殲滅はますますむずかしくなります。テロ活動がいまよりも広範に起こる可能性もあります。

 オバマ大統領は増派を承認し、同時に戦略の方針をアフガン警察・軍の育成強化に変更し、軍事行動の焦点をパキスタン国内のアルカイダに移すと発表するのではないでしょうか。すでにこの方向で動いていることは過去の報道で明らかですが、大統領が明言することで米国民に理解を求める必要があります。同時に、イスラム諸国に対して、アメリカと融和することをアピールしていく必要もあります。


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