spacewar.comが、無人攻撃機の戦果に関する記事を報じました。
The Long War Journalによれば、2008年1月以来、アメリカのミサイル攻撃でアルカイダの上級指導者15人が、中堅指導者16人が死亡しました。しかし、こうした攻撃はイスラム教徒の暴力を増加させる危険があります。無人機はテリク・エ・タリバン(Tehreek-e-Taliban: TTP)の指導者バティトゥーラ・メスード(Baitullah Mehsud)を殺害しましたが、インテル・センターのベン・ベンツキー(Ben Venzke)は「私はこのグループ(TTP)がまったく弱体化したとは必ずしも考えません。実際、我々はパキスタン内でかつて見たよりも大規模な爆撃と攻撃を見て、甚大な死傷者を数えています」と主張します。死後に公開された、昨年12月30日にアフガンで7人のCIA職員を殺害した爆弾犯、ヒューマン・カリル・アブ・ブラル・アル・バラウイ(Humam Khalil Abu-Mulal al-Balawi)の映像は「メスードの死に復讐する。」と主張しました。彼はヨルダン人の医師で、アルカイダの二重スパイでした。部族に関する専門家、ラヒムラ・ユスフザイ(Rahimullah Yusufzai)は、「地元の武装勢力を叩くために、彼らはいま無人機で攻撃していますが、地元の部造成力はアメリカにとって大きな脅威ではありません。でも、彼らは将来脅威になるかも知れません」と主張しました。パキスタン人の部族地区にある街の店舗経営者は、無人攻撃機が外国人戦士を阻止したように見えると言ったと主張します。ノア・モハマンドは「1つだけ利点があるようです。地域の市場を自由に歩き回った外国人の数はかなり減りました」と述べました。アシフ・アリ・ザルダリ大統領(Asif Ali Zardari)は、3年足らずで約3,000人を殺害した空爆を批判し、無人攻撃機が武装勢力に対する国のコンセンサスを蝕みつつあると述べました。「無人機の攻撃はタリバンを支持しなかったかも知れない人たちを先鋭化させています」。ヘリテージ財団のリサ・カーティス(Lisa Curtis)は、デトロイトの航空機爆破未遂事件でアルカイダの脅威が再認識された後、オバマ政権は無人攻撃機にさらに依存するようになったと言います。「長期間のコストは、それがパキスタンで反米感情を増加させることです。それはパキスタンとの協力をさらに難しくします」。無人機の攻撃が主要都市で行われ、民家人に大きな被害を出せば、大衆が抗議することになると、カーティスは主張します。
記事を要約すれば、無人機が空爆を行うことで、外国人戦士がいつ攻撃されるかも知れないと恐れ、移動に注意を払うようになったものの、パキスタン国民の反米感情が増しているということです。メリットとデメリットを考えると、デメリットの方が多い状態です。武装勢力の移動は制限されているだけで阻止できておらず、タリバンやその他の武装勢力が比較的自由に移動を行っていることは明らかです。指導者を何人殺しても、新しい指導者が着任するだけで、組織の力がほとんど変化しないことも知られています。メスードが死んだときは、タリバンが内紛状態になったとの見解が出されましたが、結局、大勢に影響は出ませんでした。それほど先進的でも効率的でもない彼らの戦闘システムでも、最も丁寧な訓練を積んだ米軍兵士と渡り合うには十分なのです。歩兵戦闘は、そのような性質があるのです。私は、あるドキュメンタリー番組で、米特殊部隊の兵士が「アルカイダの方が戦術が上だった」と述べているのを聞き、驚いたことがあります。最高の装備と訓練を受けた兵士と、低レベルの兵士も、機械化が進んだ時代には、それほど大きな差はなく、状況によっては後者が優位を得ることもあるのです。この神話は、第1次世界大戦で消滅したはずなのですが、いまだに俗説のように世間にはびこっています。兵士の能力や士気が重要な役割を占めたのは、連発銃の登場の前くらいまでです。近代兵器の殺傷力は、兵士の能力や士気をほとんど埋めているのです。こうした皮肉は、無人攻撃機のようなハイテク兵器にも言えます。莫大な費用で開発したハイテク兵器が生む戦果は、思ったほど大きくはなく、費用対効果を考えると、疑問符がつくことがあるのです。しかし、第二次世界大戦後、アメリカの戦争文化は、他国が持たない装備や訓練を開発することで、世界の最先端を行くという形をとり、そこから外れることはできそうにありません。これが、「我々が行けば、第三世界の軍隊など吹っ飛ばせる」という慢心につながり、せっかくのハイテク兵器によるアドバンテージを失うという、皮肉な結末へとつながるのです。もし、アメリカがこのことに気がついて、自らの戦争文化を変革するなら、それは恐るべき軍隊になるかも知れません。しかし、今のところは、アルカイダの方が戦略、戦術が柔軟で、それは弁慶(アメリカ)と牛若丸(アルカイダ)に比せられるでしょう。