FBI長官がアルカイダの拡大を警告

2010.1.21

 military.comによると、ロバート・ミューラーFBI長官( FBI Director Robert Mueller)が、米議会で証言し、アルカイダとその分派が拡大し、再建していると述べました。

 ミューラーFBI長官は、アフガニスタンにいるアルカイダの基盤の多くは破壊されたが、テロネットワークとその協力グループはパキスタン、イエメン、アフリカの角(ソマリア、ジブチ、エチオピア付近)で再建していると述べました。

 これは非常に重要な証言ですが、残念なことに、ごく簡単にしか報じられていません。2003年12月に発表された論文で、米戦略研究所のジェフリー・レコード教授は、正規軍とテロ組織の違いについて述べ、正規軍が国の領域を守るのに活動が制約されるのに比べ、テロ組織は活動できればどこででも活動すると論じました。アルカイダが自由に活動できるのがイスラム諸国に限られるとしても、その範囲は到底、米軍やその他の連合軍が網羅できる限界を超えています。しかも、正規軍が居場所を捉えやすいのに比べると、テロ組織は発見が困難です。かつ、その範囲は対テロ戦の初期に比べて拡大しています。アフガンだけだと思われたアルカイダは、パキスタンからインド(ひょっとするとフィリピンも)までの広大な範囲に散在し、中央アジアからアフリカ大陸にまで拡大しているのです。この状態でオバマ政権に責任が移ったわけですが、これは大統領が簡単に解決できる問題ではありません。本来、ブッシュ政権が取り組むべき問題でしたが、彼らはイラクで自ら戦線を無駄に拡大してしまいました。この状態では、1つの戦域で勝利を収めたとしても、敵は別の戦域で活動を再開するだけで、将棋の千日先手のように、いつまで経っても戦いが終わらないことになります。これは戦略論でも避けるべき状況とされていることです。しかし、なぜか世界的にこうした議論が起こらないのです。その間にも、テロ組織は拡大と分散を続けています。このままでは、レコード教授が予測したように、対テロ戦が「終わりのない戦い」になってしまいます。


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