爆弾処理部隊を描く『ハート・ロッカー』

2010.1.26

 3月6日からキャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』(公式サイト予告編)が公開されます(アメリカでは昨年6月に公開)。この映画の劇場用パンフレットに、私がレビューを書くことになりました。

The Hurt Locker

3月6日(土)より、TOHOシネマズ みゆき座、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー!

(c)2008 Hurt Locker, LLC. All Rights Reserved.

 この作品は、当サイトでこれまで解説してきた対テロ戦の知識をもっていれば、相当に面白く観賞できるはずです。この作品は、ジャーナリストのマーク・ポールがイラクで行った爆弾処理班の取材が原案で、彼が映画化するために何度も書き直したシナリオを、ビグロー監督が撮ったのです。この作品が面白いのは、単なる爆弾処理部隊の映画ではないところです。大胆な脚色によって、おそらく最初はドキュメンタリー風だったストーリーを、劇映画に変化させているところが面白いのです。ドキュメンタリー的な作風は映像や俳優の演技に残されました。観客はこれがドラマだと分からないまま、現実をベースにした虚構のストーリーに飲み込まれていくはずです。

 この作品には、イラク侵攻が生んだ問題が、細切れにされて、随所に放り込まれています。爆弾処理部隊とは関係のない、民間軍事会社も本作に登場します。彼らの描き方なども、イラク侵攻について知っていればいるほど興味深く観られるはずです。

 前述したように、現実と虚構の混合体であることや、劇中でほとんど説明なしにストーリーが進行していくこと。結構、歯ごたえがある作品です。すっかり保守化した最近の日本の戦争映画とは違うことに注目して下さい。


 ストーリー

 2004年夏、バグダッドの爆弾処理部隊に、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹が着任しました。彼を迎えた、警護役のサンボーン三等軍曹とエルドリッジ技術兵は、常道を超えたジェームズの仕事ぶりに、最初からきりきり舞いさせられます。彼は爆弾処理ロボットでIEDを爆破するのではなく、防爆服を着て爆弾に接近し、信管を除去するのです。班長であるジェームズに逆らえない2人はストレスを溜め込みます。処理中に、イラク人は急に話しかけて来たり、車で接近して、彼らを緊張させます。そんな時でも、ジェームズは思うがままに振る舞い続けます。任務中に民間軍事会社の武装警備員と出会ったり、基地にDVDを売りに来るイラク人少年、自称「ベッカム」を可愛がったり……様々な出来事を繰り返して、帰国が明後日になった日、自爆ベストを着た男が彼らの前に現れるのでした…。


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