アメリカもタリバンの社会復帰を支持

2010.1.28

 military.comが、今後の対テロ戦の道筋を示す記事を報じています。アメリカはアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)が提唱するタリバン戦士の社会復帰を支持すると表明しました(記事1)。タリバンはアフガンのほとんど全土で影の政府を持っています(記事2)。

 アメリカの特別代表を務めるリチャード・ホルブルック特使(special representative Richard Holbrooke)は、カルザイ大統領は木曜日に下位・中間層で、アルカイダを支持しないタリバン戦士のために計画を説明します。ホルブルック特使は、「これら大多数の人々はオマル師とアルカイダのイデオロギーの支持者ではありません。囚人、タリバンから帰還した者、専門家によれば、これらの理念のために戦わない人たちは、少なくとも70%いるに違いありません」と述べました。カルザイ大統領の計画はまだ明らかではなく、ドイツが5年間で5億ドルという数字を出しているのに対して、計画を十分に聞く前なので早計だと述べています。記事には、その他の情報も書かれていますが省略します。

 NATO軍の情報担当の高官は、34州の内33州でタリバンが影の政府を持っており、国家レベルでは、タリバンの指導者ムラー・オマル(Mullah Omar)はカルザイ政権が倒れた後、政権を担う準備ができていると述べました。タリバンの広報官は、自分たちが州知事、地区の代表、各州に軍事法廷と民間法廷を持っていると言います。タリバンの拠点であるカンダハル州の議員、ハーリド・パシュトン(Khalid Pashtun)は、「国民はいま武装勢力に向いている」と言います。腐敗してなにもしない政府と違い、タリバンは即座に問題を解決します。実例として、泥棒がタリバンによって、胸に2発、頭部に1発の銃弾を撃ち込まれ、死体が道ばたにさらされた事例などを紹介されています。

 両方の記事はかなり長いのですが、今まで言われていたことと、それほど変わることはありません。しかし、影の政府がほぼ全部の州に存在し、国民の人気を得ていることは、タリバンとの和平に難しい問題を投げかけます。仕事をするタリバンは組織に残り、あまりやる気のないのが政府に転身するのでは、国の将来に明るいものは見えません。また、ホルブルック特使が言うように、転向したがっているタリバン戦士が本当に70%もいるのかという疑問も起こります。アフガンの実状も十分に見えず、欧米諸国が下している評価も正しいのかは不明です。しかし、すべての国が、タリバンの和平を希望するのは間違いありません。特に、アメリカやイギリスは、これでうまく問題を処理したことにしたいのです。終わっていない宿題を、どうやってやったように見せかけるか、という話と同じです。 私は、このまま一部のタリバンを取り込んでも、内戦は続くと思います。タリバン戦士の50%が転向しただけでも、私には驚きです。アフガン復興は、この先、何十年も続くとしか考えられません。災いを転じて福となす可能性があるとすれば、アフガン復興の事例が世界中に知れ渡り、同じ手法が各地で用いられて(それには当然、金もいりますが)、世界的にテロ組織の存在理由がなくなることでしょう。しかし、各国とも、そこまで考えていないように見えます。私には、この戦いに欧米諸国のいい加減さを強く感じます。先進国がこれでは、世界平和などいつまで経っても手に入りません。

 military.comによると、アメリカのイエメン戦略に関する記事も報じられています。時間がないのでお知らせのみとします。


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