爆破未遂事件がグアンタナモ問題に波及

2010.1.7


 military.comによれば、デトロイトで起きた旅客機爆破未遂事件のため、キューバのグアンタナモベイの抑留者をイエメンに送還する計画が中止されました。

 オバマ大統領はこの発表と同時に、グアンタナモベイの収容所を閉鎖する意図に変わりがないことを表明しました。爆破未遂事件の数日前、オバマ政権はグアンタナモベイに収容されている6人の男性をイエメンへ帰しました。テロ対策担当大統領顧問ジョン・ブレナン(John Brennan)は時と状況がよければ抑留者がイエメンに戻されるだろうと述べました。現在、グアンタナモベイに収容されている抑留者の半数198人はイエメン出身者です。爆破未遂事件以降、共和党と民主党の両方から抑留者をイエメンに送還することに対して、超党派的な反対意見が噴出しました。23歳のナイジェリア人の男性がイエメンでアルカイダの工作員から指導を受けて行動したと自白してから、オバマ政権が進めていたグアンタナモベイ収容所の閉鎖はやりにくくなっています。

 これとは別に、火曜日に米連邦上訴裁判所は、2002年以降、アフガニスタンで捕らえられてグアンアタナモベイに抑留され、戦わないことを誓約したイエメン人のタリバンの元コック、ガレブ・ナサル・アル・ビハニ(Ghaleb Nassar Al Bihani)を継続的に抑留することを指示しました。3人とも裁判官の内2人はブッシュ政権期に任命された判事で、彼らはオバマ政権がこのケースで支持したよりも強い抑留権の見方を採用しました。

 この記事を読んで、「また始まったか」という気がしました。クリスマスの爆破未遂事件以来、アメリカは「イエメン・ヒステリー」状態で、グアンタナモベイの抑留者の釈放に「待った」がかかってしまいました。先日来、議員たちが抑留者の釈放は待てと言い出していましたが、オバマ政権はそれに屈した形です。アル・ビハニの例をとっても分かるように、彼はナイジェリア人でアルカイダの指導を受けた場所がイエメンだというだけです。犯人がイエメン人だったからイエメンが危険だと考えるのは、アルカイダという組織の性質を無視した意見に過ぎません。そこには軍事的なセンスは感じられず、単なる条件反射しか見えません。アルカイダは、自身が入り込める地域なら、どこにでも入り込み、訓練基地を設け、戦士や資金を調達することはすでに明らかです。だから、「国境」を考察の中心に置くのは正しくありません。テロが起きたからイエメンが危険だというのなら、抑留者はいつまでも拘留することになり、それはアメリカの人権制度を大きく傷つけることになります。旅客機爆破未遂事件は刑事法廷で裁かれることになりますが、アメリカでは軍事行動の被告なのだから軍事法廷で裁けという声が出ています。それよりも、アメリカは「なぜイスラム諸国から自分たちがこうも嫌われているのか」を考えるべきです。それも「殺してやりたい」ほど嫌われていて、それが現在の対テロ戦の原因であることを認識すべきです。逆に、日本はイスラム諸国から多くの場合、好かれてきました。なぜそうなのかをアメリカ人は考えてみるべきです。テロ容疑者に対する扱いが過酷になるほど、イスラム諸国のアメリカに対する風当たりは強くなるのです。


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