携帯電話がハサン少佐の犯行を撮影

2010.10.18

 米軍内部の殺人事件に関する報道を3件紹介します。軍人の世界も、一般人の世界と大差ないことが、よく分かります。今回は、記事の抄訳とコメントを交互に1件ずつ記載します。

ハサン少佐の犯行をビデオが撮影

 military.comによれば、フォート・フッド基地で大量殺人を行ったニダル・ハサン少佐(Maj. Nidal Hasan)の事件に関して、統一軍規法典第32条の審問が行われ、ランス・アビルス上等兵(Pfc. Lance Aviles)が反対尋問の中で、11月5日にハサン少佐が一斉射撃を放ったのと同じ日に、2本の携帯電話のビデオを削除するように彼の下士官が命じたと言いました。ビデオ映像は審問がハサン少佐を軍事法廷に立たせるかどうかを決める決定的な証拠になるかも知れません。

[コメント]

 アビルス上等兵が破壊を命じられたビデオを破棄したとは書かれておらず、証拠になるかも知れないと書いてあるので、まだ存在しているのでしょう。上官である下士官が、こんな貴重な証拠を彼に破棄するように命じた理由が理解できません。都合が悪いので隠そうとしたのかも知れません。これは軍人によく見られる行動です。しかし、事件後に目撃者に個別の事情聴取が行われるので、その時にビデオの件をアルビス上等兵が話したのでしょう。

 記事の残りは、他の証人による、生々しい事件の状況の証言です。それを聞く限り、凄まじい状況があったようです。証言からは、少なくとも2人が頭部に被弾して亡くなったことが分かります。以前に紹介したように、ハサン少佐は異常に卓越した射撃能力を事件で見せました(関連記事はこちら)。

モルロック技術兵は最高で終身刑

 military.comによれば、アフガニスタン人を殺害した容疑をかけられているジェレミー・モルロック技術兵(Spc. Jeremy Morlock)は、有罪判決を受けても死刑にはならず、最高で終身刑だと米陸軍は言います。これは驚くことではありません。死刑情報センター(the Death Penalty Information Center)によれば、1961年以来、米軍は誰も死刑にしていません。

[コメント]

 モルロックは事件の解明に大きく貢献し、主犯よりは関与が低いことから、極刑はないということは想像に難くありません。

 米軍の統一軍規法典は、殺人に関しては、刑事訴訟法よりも厳しいと言えますが、実際には死刑はそれほど行われていません。しかし、死刑囚は存在します。死刑情報センターの関連記事を紹介しておきます。1988年、ロナルド・グレイ二等兵(Pvt. Ronald Gray)の死刑をブッシュ大統領(George W. Bush)が承認しました。1961年以降死刑が実施されていないのなら、これが実行されていないことになります。この記事には、他に9人の男性が軍の死刑囚棟にいると書いてありますから、将来、執行される可能性はあります。

戦友殺しで遺族が憤慨

 military.comによれば、米陸軍のジョン・ジュニア・カリーヨ技術兵(Spc. John "Junior" Carrillo)がイラクでルームメイトに銃で殺害されました。彼は居住区に戻ってきたとき、ルームメイト同士が喧嘩をしており、それを引き離そうとした時に、彼らの一人に撃たれて死んだことだけは分かっています。しかし、彼が死んで3週間経っても公式な報告が出ないことに、彼の家族は憤っています。

[コメント]

 この事件は未だに調査中のようで、ほとんど何も分かりません。しかし、3週間も経てば、もう少し詳しいことが分かってもよさそうなものだと思われます。軍は集中的に調査しますが、結論が出るまでは何も発表しないので、こういうことになります。

 戦友は家族以上の結びつきを持つとはいえ、中には同僚殺し、上官殺しを行う者もいます。ガールフレンドや家族や警官を殺した者もいて、一般社会と大差はありません。軍事問題を眺めていると、そんな実感を持つようになります。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.