以前に紹介した、ノースカロライナ州キング市の退役軍人記念碑にキリスト教の旗を掲げるべきかどうかという問題が、さらに紛糾しています（関連記事はこちら）。
military.comによれば、市議会は先月、旗をセントラルパークの記念碑から取り除くことを決めました。この決定は人口約6,000人のキング市の退役軍人グループと教会を激怒させました。ベテラン戦争時代の空軍退役兵レイ・マルティーニ（Ray Martini・63歳）は、戦争記念碑の前の木製のポールに掲げられているレプリカのキリスト教旗を守るために、24時間寝ずの監視を始めました。９月22日以来、こうした監視は支持者が配達する家庭料理、ウェストバージニア州の男性が寄付した寝袋と毛布、ニューヨーク州からルイジアナ州までから来る支援の提供によって強化されています。
抗議者たちは23日に、市がキリスト教旗を記念碑の常設用金属ポールに戻すという、彼らの究極的な目標を支持するために集会を開くことを計画しています。最近の公聴会で、約500人の人々がキング小学校の体育館に詰めかけました。多くはキリスト教旗を振っていました。40人以上の演説者には、旗の除去に賛成する者は一人もいませんでした。
ジャック・ウォーレン市長（Mayor Jack Warren）は、法律顧問と選択肢を調査し終えるまでは市は決定を下さないと言いました。一つの可能性は、記念碑の旗のポールにどんな宗教の標章でも指定できるということです。別の選択肢は、記念碑を退役軍人団体へ売るか寄贈し、基本的に民間に手渡すことです。「簡単に言えば、何が我々にできて、できないのか、何が合法で何が違法かということです」と彼は言いました。
ウェーンズバーグ大学（Waynesburg University）の歴史学教授エルサ・コフマン（Elesha Coffman）によれば、白地の左上角の青い正方形の中に赤い十字を置く旗は、１世紀少し前にニューヨーク市の牧師が創り、リベラル派と保守派のプロテスタント教会の両方で使われてきましたが、滅多に注意をひくことはなかったと言います。「アメリカの教会に通うプロテスタントのほとんどは、彼ら自身の聖域にキリスト教の旗があるかどうかすら、これまで気がつかなかったと思います」「論争がない限りは、そうしたものでしたが、人々は突然それを取り上げました」と彼女は言います。
キング市では、グリオン・クリスチャン・サプライセンターは論争が始まってから、何百もの旗を売りました。キリスト教の旗のデカールからTシャツまで何でも売っているカルヴァリ・パブティスト教会の露店を運営したリアン・ゲイ（Leanne Gay）は「最初の２週間は、我々は約２時間おきに、旗を売り切ってしまいました」と言いました。カルヴァリ・パブティストのケビン・ブロイヒル牧師（The Rev. Kevin Broyhill）は監視の場に旗を寄付しました。しかし、ブロイヒル牧師は、旗を恒久的に記念碑に戻すのは法的な戦略の敗北だと考えています。彼は市が記念碑を退役軍人団体へ渡し、私的な土地にすることを望んでいます。「現在、第４巡回裁判所の判事は非常にリベラルです」「この戦いはすでに法廷で戦われています」と彼は言います。ウィンストンセーラム州立大学（Winston-Salem State University）の弁護士で政治学教授のラリー・リトル（Larry Little）は、ブロイヒルはおそらく正しいと言います。「彼らは彼らが負けることを知っています」「彼らは納税者の金を、話を鵜呑みにしない弁護士ならば、政教分離に違反するとしか言えないことのために使わなければならないでしょう」。
一部を除いて、記事の大半を訳しました。
なぜこの問題がここまで大きくなるのかを考えてみる必要があります。
私は以前から、戦争そのものだけでなく、戦闘地域になっていない本国でも、戦場そこのけの争乱が起きる傾向を指摘してきました。そして、それに「銃後の狂騒」と名づけました。キング市の騒ぎは、まさにその典型です。
旗の掲揚問題なんか、戦場で起きる問題に比べれば、どうでもよいほど小さなことです。タリバンやアルカイダを打倒するために、人々は寝ずの番をやろうと思うでしょうか？。もし、旗を買うのと同じ金を寄付したら、タリバンやアルカイダがこの世から消えるとしたら、金を出すのでしょうか？。
太平洋戦争中、南太平洋上の島に米軍が民間人を収容する施設を作りました。その中で、殺人事件が起きました。原因は被害者が「日本は負ける」と言ったためでした。当時の風潮を考えると、あってもおかしくないことですが、被害者を殺したところで戦況が変わるわけではなく、収容所に入っている以上、戦争に貢献することもできません。人を殺す手間を考えると、目的と努力のバランスは欠いています。
それでも、こういうバランスの取れていない行動は、多くの戦争で観察できます。ここには人間の戦争における不合理な行動が集まっています。
反対者たちも、この問題が連邦最高裁まで行けば、あるいはその手前でも、裁判に負けることを理解しているようです。支援者たちの輪も、南部中心です。こんな話は西海岸では理解されないことも分かっているのでしょう。記念碑を民間に渡すのはよい案です。そこに事件が落ち着くことを願うのみです。
