パキスタン国境に溢れる米製品

2010.10.7

 パキスタン領内へのミサイル攻撃に端を発したアフガニスタンへの補給の停止に関する記事が3件あります。これらの記事は既知・重複した内容が多いので、目新しい部分だけ紹介します。

 military.comによると、水曜日にパキスタンが北部国境を閉鎖してから6回目の攻撃が起こりました。

 武装勢力は2ダース以上のタンクローリーに放火して、運転手を殺しました。

 米国防総省の広報官ジェフ・モレル(Geoff Morrell)は、ヘリコプター攻撃の調査が水曜遅くに終了する予定で、同盟間のもめ事がすぐに解決される見込みだと言いました。モレル広報官は、トルカム国境検問の閉鎖はNATO軍に燃料の問題を起こしていないと強調しました。「たとえ将来まで閉鎖が続いても、我々はそれが起きるとは思いません」「しかし、我々は前進を見ていて、これがすぐに解決できるという感覚を得ています」「誤解を生む事件があります。妨げはありますが、それは協力関係、この極めて重大な協力関係が少しでも頓挫することを意味しません」。

 水曜日早朝の攻撃は、チャマン国境へ向かっているトラックに起こりました。2両の車に乗った人数不明のガンマンが、バルチスタン州(Baluchistan province)州都クエッタ(Quetta)郊外にある道路沿いのホテルの駐車場に止めてあったトラックを攻撃しました。少なくとも25台のトラックが、車両伝いに急速に広がった火災で破壊されました。トルカム国境閉鎖以来、輸送車両への6件の攻撃の内、4件はトルカム行きの車両で、2件はチャマン行きの車両に対して行われました。最新の攻撃に犯行声明は出ていません。

 military.comによれば、アメリカはアフガン国境近くでパキスタン兵士2人を殺したヘリコプター攻撃について、アメリカ人パイロットが兵士を武装勢力を誤認したとして、謝罪しました。

 「我々は心からの謝罪をパキスタンと死傷した国境警備隊の家族にまで広げます」と駐パキスタン米大使アン・パターソン(Anne Patterson)は言いました。

 パキスタンは最初、攻撃で兵士3人が死亡、3人が負傷と報告しましたが、重傷の兵士1人と最初に死亡したと報告された兵士1人は、結局、生き残りました。

 攻撃の前にアメリカのヘリコプター2機に発砲したパキスタン兵は、航空機が数回パキスタン空域に入ったあとで、彼らの存在を知らせようとしたのだろうと、調査チームは言います。「我々はパキスタン国境警備兵は、近くでの交戦を耳にして、ヘリコプターが近くを飛ぶのを耳にして、単に警告射撃を放ったのだと考えます」と、調査を指揮した米空軍ティム・ザダリス准将(Brig. Gen. Tim Zadalis)は言います。「この悲劇は、連合軍がパキスタン軍との、よりよい調整によって避けられたかも知れません」。

 デビッド・ペトラエス大将(Gen. David Petraeus)は「死傷した人たちの家族、パキスタン軍、パキスタン国民」にも哀悼を示しました。「我々は人命を失ったこの悲劇を深く遺憾に思い、パキスタン軍および政府と共に、これが再び起こらないように働き続けます」。

 military.comによれば、パキスタンの街で、アフガン戦に関連する品物が売買されています。

 アフガン国境への道に沿ったペシャワール市(Peshawar)では、米陸軍の装備品、コンピュータ、IEDを避ける方法を示すマニュアルを買うことができます。業者はこれらがどこから来るかについて明かしませんが、多くはアフガンへの軍補給品を運ぶトラックから盗んだものです。

 コンテナ・ターミナルには、アメリカから来た冷凍鶏肉、カナダから来た卵、インドから来た肉が積み上げられ、アフガンへ旅立てません。施設の管理者は、商品は外国部隊用ではなく、彼はそれらが閉鎖が長く続いて、台無しになることを恐れています。

 ペシャワール郊外のシタラ市場(The Sitara Market)は、パキスタン北西部の部族地域を他の国土から分けている境界線から約100ヤード(100m)です。境界を渡ると、法廷や通常の警察はありません。ハシッシュとヘロイン、密輸品と銃器はビックビジネスで、アルカイダとその他のイスラム武装勢力は、そこに長らく隠れ家を見出してきました。

 市場が国境に近いのは偶然ではありません。25年以上も、そうした特典が生じ、おむつ、食品、電子機器のような、アフガンから密輸されたり、そこへ向かう西欧の品物が扱われています。2002年に、2階建ての荒れたビルの小さな店が、毎日境界線を騒音を立てて横切る数百のコンテナから略奪された品物を売り始めました。ブーツ、懐中電灯、工具、医療機器、事務用品、食品と軍服は、品質がよくパキスタン北西部で売られている同種の品物よりも安いので需要があります。ムハマッドとだけ名乗った店主は「アメリカの商品はナンバー1です」「すべてが最高です」と言いました。

 今月早く、パキスタンの国境警備隊は部族地域の倉庫を急襲し、ヘリコプターのスペアパーツ、医療機器、防弾ジャケット、家族から米兵に送られた写真を回収しました。パキスタンのタリバン指導者は昨年、コンテナから奪われた米軍のハンヴィーを運転するのを撮影されました。しばしば地域を管理する武装勢力と共に行動する犯罪集団は多くの襲撃の背後にいます。ある業者は、資材の一部は同様の品物を売るカブールの市場を持つアフガンから来ると言います。彼は、一部のNATO軍兵士や請負業者が不必要な補給品をそこで売っているかも知れないと示唆しました。ペシャワールの市場にある1ダースほどの露店のいくつかを探し、武装勢力が潜在的に使えるかも知れない、おそらくほとんどいくつかの書類、おそらく最も驚く、軍用車両搭載の「ジャマー」がどうやって遠隔操作式爆弾を止めるかの文章と図を示す小冊子を掘り出しました。171ページのマニュアルは「公用に限る」と記され、本の情報は公の場所で話さずに、捨てずに破棄するように求めています。

 業者は防弾ガラスや強化された車両のシャーシを含むほとんどの品物を注文できると言いました。噂では銃器、アメリカ製のものすら売られています。市場の所有者ハニフ・アフリディ(Hanif Afridi)は、最近の訪問の間に閉じられた店を指し示しました。彼が言うには、そこは持ち上げるのにはトラックがいるほど重いほどの軍用コンピュータとその他の電子機器を売りました。

 アフガン駐留NATO軍広報官ゲーリー・カークナー海軍大佐(Navy Capt. Gary Kirchner)は、売られている特定のアイテムについてコメントするのを辞退しました。市場は警察と問題を抱えていないけども、昨年タリバンが「米国製品」という看板を持つ店主に説明を求めて訪問したとアフリディは言います。アフリカとお茶を取引したことがあるアフリディは、同じ理由で米国製品を買えることを告知する市場の外にある看板を外しました。業者たちは、ビジネスは以前ほどよくないと言います。ほとんどの人はそれをペシャワールの不安定な治安状況に帰しました。変わらない無法が、いまは顧客を追い払っています。

 カラチからアフガンまで冷凍食品のコンテナを毎月500個を輸送する運輸会社の経営者アンワル・サイード(Anwar Saeed)にとっても、それは悪いニュースです。彼は国境でコンテナが立ち往生し、約100個を自分のターミナルに積み上げています。彼は、彼の食品は一般のアフガン人用で、1965年からやっている輸入事業の一部なのに、当局は彼のコンテナに誤ってNATO軍のものとして分類しました。

 当局者は封鎖について多くを語らず、少数の地元当局者が何が止められているのかについて正確な詳細を与えようとしています。サイードとカイバル輸送協会の理事長、シャキル・カーン・アフリィディ(Shakir Khan Afridi)は、非NATO軍の品物が越境を許されていると言います。これはサイードの仕事への最初の打撃ではありません。7月に国境はトラック運転手のストライキのために2週間閉鎖されました。パキスタン史上最悪の洪水がルート上の橋を流し去り、さらなる遅れを生じました。彼はいま、ターミナルで冷凍を続けるために彼に大金を失わせる注文を待っている、怒ったアフガン人のビジネスマンを抱えています。「我々は顧客を、我々だけでなく、全土で失いつつあります。アフガン人はイランに目を向け始めています」とサイードは言います。「国境を閉鎖してどうやって金を稼ぎますか?」。

 ペシャワールへの道沿いで、立ち往生する運転手は国境再開の知らせを心配しながら待っています。ズルフィカル・アリ(Zulfikar Ali)は、長距離ドライバー用軽食堂の経営者は、攻撃の危険があるため、彼と他の運転手を置こうとしないと言います。彼は彼らが薪を探す道路脇の森に毒蛇がいて、彼と他の者たちは金を使い果たしたと言います。「私は一番の問題が何か知りませんが、それはここでは危険です」。


 ワシントンの反応はかなり苦しいものです。確かに補給切れが深刻になることはありませんが、前にも言ったように、対策のためにコストがよりかかるからです。

 国境の状況が限界に近づいていることから、パキスタンはそろそろ封鎖を解くでしょう。尖閣諸島の事件で中国があまり上手とは言えない経済制裁を日本に行いましたが、パキスタンはそこまで下手ではないはずです。数日後には、国境再開の決定が下されるでしょう。

 国境地帯に米国製品が流れていることに驚く方もいるでしょうが、こうした問題は過去の戦争でも起きたことです。カラチからアフガンまで、普通なら5日間の行程です。この間に、荷物の中抜きが行われても不思議ではありません。アメリカも、こうした運送中の窃盗について、あまり追求していないように思えます。過去に、イラクでもアフガンでも銃器の大量紛失が発覚しています。普段目にしないような荷物が目の前にあるとき、そこが戦地で本国のような厳しい法規制がない環境では、人の心も変わるというものです。国家への忠誠よりも、一儲けして帰国したくなってもおかしくありません。

 古い軍用マニュアルはインターネット上で手に入りますが、現行の版が溢れているのなら、一つ欲しいくらいです。軍用マニュアルは、米軍の戦術や技術を知るために大変便利な資料なのです。


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