military.comによれば、パキスタンの部族地域で撮影されたドイツ人武装勢力の映像がはじめて明らかになりました。
映像では、髭を生やした武装勢力が足を組んで床に座り、AK-47が背後の壁に立てかけられ、流ちょうなドイツ語で「Wir sind die Soldaten Allahs.(我々はアラーの兵士です)」と述べ、3人の仲間の聖戦に加わる決意を称賛しました。
15〜40人のドイツ人とヨーロッパ人がパキスタンの無法地帯で軍事訓練を受け、隣国アフガニスタンでNATO軍とのタリバンの戦いに参加するか、ヨーロッパに戻って、それらの国の柔らかい下腹を攻撃しようとしているとみられます。ドイツ語を話す者は、ドイツとモロッコの市民権を持ち、ウズベキスタンのイスラム運動が制作するビデオによく見られる、ボン生まれの2人兄弟の1人、モウニア・チョウカ(Mounir Chouka)です。ドイツ連邦検査官は木曜日に、2人がテロ組織のメンバーである容疑で調査中であることを認めました。
このビデオクリップは、今年の夏早くに武装勢力のウェブサイトに載り、約40分間のビデオは聖戦の新兵勧誘を語ります。「すべての国境検問、すべての空港、すべての捜索において、…これらの敵の目をくらますよう、我々はアラーに祈ります」「アラーは答えます。証拠?。我々はここにいます」。
情報は乏しいものの、ドイツ人はパキスタン北西部で最大のヨーロッパ人グループの一人とみられます。大半はイスラム国からの移民や彼らの子孫と考えられます。ミル・アリ(Mir Ali)に行った記者は、店の地下にあるインターネットカフェを、世界中から来た武装勢力が過激派のビデオを見たり、電子メールを送っている場所と表現しました。パキスタン軍の基地は近くにありますが、兵士はこの地域をパトロールしません。
「3~4ヵ月かけて、1人づつポツポツとやってきたドイツ人がいると聞いている」と、前部族地域の治安責任者マフムード・シャー退役准将(retired Brig. Mahmood Shah)は言います。「彼らは、トルコ人か、トルコ人のように見える者か、ドイツから来たトルコ人だろうと言う者たちがいます」。
シャー准将は、このグループは15~20人だとみられていますが、彼らについて、多くは分かっていないと言います。
アーメド・シディクィ(Ahmed Siddiqui)は、国境地帯でテロの訓練を受けるために、2009年にハンブルクを去った1ダースのイスラム急進派の1人だと、テロリズム研究・安全保障政策研究所(Institute for Terrorism Research and Security Policy)のロルフ・トホフェン(Rolf Tophoven)は言います。
シディクィは、航空学校に通うためにアメリカに引っ越す前に、ハンブルクを基地として使ったモハメッド・アタ(Mohamed Atta)と他の9/11テロのハイジャック犯がよく行ったのと同じモスクで祈りました。
すでにテロリストの細胞に合体していた9/11のハイジャック犯と違い、2009年に去ったシディクィと他の者たちは、より組織化されていない計画があると考えられます。
「我々は、(パキスタンの)これらの地域に行き、そこでテロリストとしての訓練を受けたがっている、沢山の単独の人、孤独な戦士を抱えています」とトホフェンは言います。
ドイツ情報当局は、シディクィが聖戦の一翼を担うためにパキスタンに向かおうとしていたハンブルクのイスラム主義者の一部であるのに気がついていますが、彼らが出国するのを防ぐ手はないと言います。
記者に話す権限がないため、匿名を希望した当局者は、2009年にハンブルクを去り、パキスタンに現れたラミ・M(Rami M)とだけ識別される容疑者の類似例をあげました。
25歳のシリア系ドイツ人は、警官が車中のブルカを被った、とりわけ背の高い女性に疑いを持ち、ラミ・Mの変装と分かり、6月にバニュ(Bannu)で捕まりました。
彼は、パキスタンにいる間に武器と爆弾の扱い方を学び、ドイツに送り返されました。
ラミ・Mはテロ組の一員と共に、パキスタンにいる間に、ウズベキスタンのイスラム運動に参加し、その地域で仲間と共に戦った容疑で起訴されました。このグループは、アルカイダとつながりがあり、アフガンで外国部隊を攻撃しているといわれます。
さらに、アブ・アダム・アル・アルマニ(Abu Adam al-Almani)、の名前で知られるモウニア・チョウカ(Mounir Chouka)、彼の兄弟のヤシン(Yassin)、4月30日にパキスタン兵に殺されたイスラム改宗者のエリック・ブレインインジャー(Eric Breininger)ミル・アリ地域につながる別のドイツ人がいます。
ブレインインジャーは、ドイツ国内で米国の目標を攻撃する阻止された計画につながるイスラム聖戦連盟の一部です。
この組織の4人、イスラム教に改宗したドイツ人2人、ドイツに住むトルコ人2人、彼らすべてはミル・アリ地域の基地で訓練を受けた全員は、3月に攻撃計画で有罪になり、5~12年の禁固刑を科されました。
火曜日の無人機のミル・アリへの攻撃で、8人のドイツ人の誰が死んだかは明らかではありません。ドイツ外務大臣グイド・ウェスターウェール(Guido Westerwelle)は水曜日に、それについての信頼できる情報を受け取っていないと言いました。
ドイツ連邦刑事警察局は、220人のドイツ人が近年、この地域にテロ訓練のために行き、およそ半分が帰国した「兆候」を持っていると言います。匿名希望の女性広報官は、70人がこうした訓練を受け、3分の1が帰国した「確固たる証拠」があると言います。
トホフェンは、アフガン・パキスタン国境地帯に、30~40人のドイツから来た根っからのテロリストがいると見積もっています。
しかし、地域の武装勢力指揮官は、CIAその他の侵入者を心配するので、ヨーロッパから来た武装勢力は、訓練を受けた後で、彼らがより大きな脅威になり得るヨーロッパに戻る方が多いらしいとトホフェンは言います。「彼らは情報当局が秘密エージェントを組織に持ち込むのを恐れています」「彼らは、ヨーロッパ人をドイツ、フランス、イギリス、イタリアでアルカイダの名前をつけたテテロ作戦に使うのを好みます。こうした連中は地元で育ったテロリストです。彼らは我々の文化を知っています。彼らは我々の言語を知っています。彼らは我々の環境を知っています」。
なお、パキスタンのトルカム国境検問所はいまだ閉鎖されたままです。military.comによれば、木曜日、アメリカがヘリコプター攻撃について謝罪したあとも、パキスタンは国境を再開する決定を行いませんでした。パキスタン外務省広報官アブドゥル・バシット(Abdul Basit)は、木曜日の記者会見で、当局はまだ状況を評価していて、やがて決定を下すだろうと言いました。
想像以上にヨーロッパ人によるテロ計画は進んでいます。それも、最大で220人もテロ訓練を受けているのは、かなりの脅威です。
また、成り行きが、いかにもありそうで、とても自然な展開なので驚かされます。
まず、アメリカのイラク・アフガン戦に憤激し、イスラムの若者がアルカイダこそ理想と考えるのは、実は年長者たちへの反発です。こうしたことは、アメリカでも起きました。映画「プラトーン」に、軍に志願したのは、大人の俗物主義に抵抗したからという、主人公の台詞があります。若者には、そうした純粋な面があるのです。アルカイダは、そういう若者に最も崇高な死に場所を与えました。
そして、ヨーロッパに住んでいるイスラム教徒が、アルカイダの訓練を受けようとするのも当然です。
しかし、武装勢力の指揮官がスパイが訓練生に紛れ込むのを心配するのも当然です。そこで、ヨーロッパ人は帰国させ、地元でテロ攻撃を起こさせようとするわけです。「風が吹けば桶屋が儲かる」のとおり、イスラムの若者が怒り出すと、ヨーロッパが危険になるという構図です。
このように、過去の事例と比較しても、特に無理のない展開です。それだけに現実的で、脅威を感じます。
こんな展開は2001年には思いつけませんでした。そして、米軍も民間人へコラテラル・ダメージが及ぶことをまったく考慮することなく、被害を出し続けました。敵がいるからという理由で、後先のことを考えずに民家の近くを空爆し、子供を死なせたりしました。これでは恨みをかうのは当たり前です。同時多発テロの直後、私が最初に考えたのが、アルカイダを追求するのは当然としても、コラテラル・ダメージは極力避けないと、イスラム教徒の反発を買います。アメリカはイスラム教徒から、ただでさえ信頼がないのですから、細心の注意が必要だと考えました。ホワイトハウスに「蛇の頭だけを狙え」と電子メールを出したのは、こうしたことが気になったからでした。しかし、そういう配慮について、アメリカ人はどうやら関心がないらしいということが、その後、徐々に分かってきました。
こうして因果は巡り、ヨーロッパ人が西アジアでテロ訓練を受け、本国で破壊活動を行う直前の段階まで発展したのです。
前に指摘したように、やがて、尻尾を捕まれないように、訓練のために渡航するのではなく、テロの技術を独習してテロリストになる者が現れるかも知れません。
爆弾は少し勉強すれば、作れるようになります。アメリカで「ユナボマー」の名で知られるセオドア・カジンスキーは、最初、単純な黒色火薬の爆弾を作りましたが、すぐに硝酸アンモニウムを使う強力な爆弾を作れるようになりました。黒色火薬は木炭、硫黄、硝酸カリウムを混ぜればできあがります。木炭や硫黄は割と簡単に手に入りますし、硝酸カリウムも藁に尿をかけて製造できるほど手軽です。日本でも最近、復讐の目的で高度な爆弾を製造し、警察に逮捕された人物がいます。オウム真理教は最初、単なる宗教オタクの集まりとみなされていましたが、大規模なテロ事件を起こしました。ダイナマイトをより強力にするパイプ爆弾は、水道管の工作ができれば作れ、映画「ターミネーター」に、その製造場面があります。
実は大規模なテロ事件も、素人みたいな連中が引き起こしたものが少なくないのです。テロリストという言葉からはプロフェッショナルを連想しますが、実態はその逆です。