若い退役軍人の自殺が急増

2010.11.15

 military.comによれば、不況とイラク・アフガニスタン戦争のトラウマが退役軍人の自殺率を増加させていると、エリック・シンセキ復員軍人援護局長(Department of Veterans Affairs Secretary Eric Shinseki)は言いました。

 退役軍人の日、シンセキ長官は米国内にいる退役軍人は約2300万人で、復員軍人援護局に登録している復員軍人は約800万人だけだと言いました。

 1月に彼は、年間約30,000人の自殺の20%を退役軍人が行っていると言いました。国防総省によれば、昨年の自殺者は2008年の267人から309人へと増加しました。2005~2009年の自殺者数1,100人は、2001年以来、アフガンで殺された兵士を上回ります。国防総省と復員軍人援護局は退役軍人の自殺の統計を取り続けていません。

 シンセキ長官は、援護局が処理していない案件や障害の申請が今年は昨年の400,000から500,000件から700,000件へ急増したと言いました。彼は、新しい案件の数が局の能力を超えて素早く増えたと指摘しました。援護局は昨年977,000件の案件を処理しましたが、新しい案件を100万件受けました。大量の新しい案件は、PTSDを患うイラク・アフガン戦の帰還兵です。

 復員軍人援護局は、戦地にいる間に障害を被ったことを証明する必要はないと、PTSDと診断する必要条件を変えました。「PTSDと検証されれば、関連はいまや自動的に提供されます」と彼は言い、これが案件の増加させていると指摘しました。

 「我々は第2次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争に遡る退役軍人の治療を行っています。だから、これは多世代に渡る問題です」。

 経済不況との関係を問われ、シンセキ長官は、不況は家族にその影響を及ぼしていると述べる一方、5年間でホームレスをなくす目標と戦っていると言いました。「我々はよくやっていますが、十分に早くはありません」と彼は付け加えました。

 7月の陸軍の自殺防止に関する報告書は、十年近く軍が戦争を戦うことに専心したため、上官が帰還した兵士の無謀な行為を追跡したり、アルコールや麻薬乱用を監視し損ねていることを見出しました。

 兵士が短い帰還で繰り返し派遣されることも、軍を疲弊させています。軍は、1年間派遣するごとに2年間の帰還を与えられるようになるのを望んでいます。


 高い信頼を持ち、イラク侵攻に兵力不足だと主張して反対したシンセキ退役大将が、復員軍人援護局の長官に指名されて、どんな活動をしているかは非常に興味があるテーマです。残念ながら、そこまでは手が回りません。

 この記事からは、依然として軍人の自殺が増えていることが分かります。記事にあるように、こうした問題は過去の戦争から引きずってくるものです。最終的に一つの戦争の退役軍人への対応が完全に終わるまでは百年以上かかることもあります。

 PTSDの認定基準を変えたのは当然でした。以前の基準はあまりにも形式的過ぎました。それにより申告数が増えたのは、実態がもともと多かったことを連想させます。今後も、この傾向は強まるでしょう。どこまで行くのかが問題です。

 このように、戦争を遂行する技術にだけ目を向けていると、その後遺症によって苦しむことになります。このことは、何度警告しても足りません。



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