military.comによれば、7月に事故死したとされた第82空挺師団の衛生兵について、他殺に切り替えて捜査が進行中です。
長い記事なので、要点を簡単にまとめます。
被害者 |
モーガニー・マリア・マクベス技術兵
(Spc. Morganne Marie McBeth) 19歳 |
死亡日 |
今年7月2日 |
死亡場所 |
イラク、アサド(Asad) |
陸軍犯罪調査部(CID)は当初、事故と判断しましたが、今は他殺と考えています。
マクベスは2009年8月に戦闘衛生兵として、第82空挺師団第1旅団戦闘団第1特殊兵大隊に配属され、イラクに派遣されました。
マクベスには、父親のレオナルド(Leonard)と母親のシルビア(Sylvia)がいます。両親は娘の死について3通りの話を聞かされました。
- マクベス家に通知した兵士は、マクベスがテントの中でナイフで遊んでいる内に偶然に自分を刺したと言いました。
- マクベスは2人の兵士と共に、板にナイフを放っていました。ナイフが板から抜けなくなりました。ナイフを引き抜いたときに、マクベスが兵士の1人に偶然に刺されました。
- 捜査官は両親に、マクベスは殺害され、容疑者はマクベスの友人だと告げました。捜査官は両親に、兵士1人が殺人と共同謀議と司法妨害で、他2人が共同謀議と司法妨害で起訴されると言いました。
これらの兵士はフォート・ブラッグ基地(第82空挺師団の駐屯地)にいるかも知れません。第1旅団戦闘団は8月にフォート・ブラッグ基地に帰還しています。第82空挺師団の広報官は、誰も逮捕されていないことを認めました。
捜査官が2ヶ月以上、両親に情報を提供しないため、2人は記者に話す決心をしました。シルビアは、マクベスが死ぬ数日前に彼女と話しました。マクベスは部隊に不満足で、派遣が終わったら、新しい配属先を探すつもりだと言いました。
マクベスは、2008年7月に陸軍に入隊し、2009年2月25日からフォート・ブラッグ基地に配置されました。
捜査官はシルビアに、マクベスは死ぬ前に憲兵隊に完全な供述を提供できたと言いましたが、詳細は言いませんでした。
まず、マクベス家に通知した兵士は、詳細を聞いていなかったか、誤解したかで不正確な話を伝えたものと考えられます。CIDは最初から、2番目の話で事件を考えていたのでしょう。だから、1番目は除外して差し支えありません。
この2番目の筋書きは、事件直後に現場にいた兵士からの聞き取り調査に基づいていると考えられます。CIDはこの説明が嘘だと判断し、マクベスが故意に殺されたと考えたのです。検死結果と供述が食い違ったのかも知れません。
しかし疑問もあります。マクベスが死ぬ前に憲兵隊に供述したことは、彼女が怪我の治療を受けた可能性を示唆します。初期の段階で供述が得られたのなら、CIDは最初から殺人との認識を持ったはずです。また、よほどの重傷でない限り、刺し傷が命を奪うとは考えられません。まして、兵士は傷口を圧迫して失血を防ぐ方法を訓練されています。憲兵隊は容体が安定していないと、マクベスに聞き取りを行わなかったでしょう。状況から言って、刺し傷は1ヶ所でないと辻褄が合いません。一端は容体が安定した後に、マクベスが急変して亡くなった可能性もありますが、ありそうにない話です。
想定される真相は、兵士3人がマクベスを殺し、ナイフで遊んでいて事故が起きたと嘘をついたということです。殺害を行ったのは1人で、2人は口裏を合わせたのです。共同謀議と司法妨害は口裏合わせがあったことを示唆します。
入隊時期と技術兵という階級は、マクベスが優れた兵士であることを示しています。普通、高卒の陸軍兵士は入隊後26ヶ月で技術兵に昇進します。マクベスは7月の段階で入隊24ヶ月目でしたから、昇進が早かったのです。特に問題がないので、マクベスは人事上の理由で早めに昇進したのかも知れません。
一方で、部隊内に何らかの問題があり、マクベスが転属を希望していたことも示されています。これが事件と関係がある可能性はあります。米軍の中で殺人事件が起きるとき、原因は大抵が人間関係です。
この事件は比較的単純です。事件後に時間が経っていることもあり、すでに逮捕が行われていてもおかしくありません。そうならないのは、起訴するだけの材料が集まらないことしか考えられません。気になるのは、それが何なのかということです。ひょっとすると、何かまだ見えていない重要な事実があるのかも知れません。