パキスタンが無人機の攻撃拡大を拒否

2010.11.23

 military.comによると、パキスタンはタリバンとアルカイダを攻撃するミサイル攻撃の地域を拡大するというアメリカの要請を、国内の反対を理由に拒否したと、パキスタン情報当局者が言いました。

 アメリカは次第にパキスタン上空を飛ぶ遠隔操作の無人機による武装勢力へのミサイル攻撃への依存を増やし、今年は100回以上行い、数百人を殺しています。大半の攻撃はパキスタン軍が地上戦を避けている北ワジキスタン(North Waziristan)で行われています。今週だけで、無人機の攻撃は武装勢力とされる24人を殺害し、家を1軒と移動中の車2台を破壊しました。

 当局者は、アメリカが希望した新しく狙う場所を特定しませんでしたが、ワシントン・ポストは南西部のバルチスタン州(Baluchistan)の州都クェッタ(Quetta)周辺だとしました。ここはタリバンの指導者ムラー・モハマッド・オマル(Mullah Mohammad Omar)が活動している場所とみられています。

 アメリカの無人機は現在、アフガン国境沿いのみ連邦直轄部族地域(Federally Administrated Tribal Areas)の中に指定された区域で活動しています。アメリカは現在の区域を拡大し、タリバンとアルカイダの上級要員が活動していると疑われる部族地域の外側に新しい区域を一つ設けることの両方を模索しています。

 パキスタンは、民間人の被害のリスクが大きすぎることを理由に要請を拒否しました。

 これらの報道を、パキスタン外務省広報官アブドル・バシト(Abdul Basit)は全面的に否定しています。


 これは20日付けの記事です。すでに知られている部分は省略し、簡単にまとめて訳しました。

 これは、あまりよい傾向ではありません。アフガニスタンでの治安任務と無人攻撃機による暗殺・破壊だけがアルカイダ対策ではないからです。以前から指摘していますが、最終的にはプロパガンダにより、イスラム諸国にあるアメリカへの敵意を失わせる必要があります。治安任務と無人機の攻撃は、どちらもこれに適していません。

 しかも、これらの攻撃は計画的というよりは成り行き優先で、常に後手に回っています。普通、軍事作戦は戦況分析があり、必要な対策があり、その先には戦略的勝利を見据えている必要があります。アルカイダとの戦いでは、計画的な戦略がなく、単に戦闘を繰り返しているだけです。教育度の高い米軍の高官たちも、効果的な戦略を考案できずにいるのです。無人機による爆撃がうまく行かないと、対象区域を増やすという発想も、その辺から出ています。

 今回、秘密の交渉が漏れたのも、パキスタン情報部がアメリカへの敵意を増やすために意図的に行った可能性があります。新しい工夫も、こういう風に簡単に足を引っ張られるわけです。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.