報道によれば、23日午後2時35分頃、延坪島(ヨンピョンド)と周辺の黄海水域に北朝鮮側から砲撃があり、50発以上が着弾しました。
現段階では、韓国軍兵士2人が死亡。兵士と住民20人が負傷したと報じられています。
報道された着弾の映像から、狙われたのが大延坪島(テヨンピョンド・kmzファイルはこちら)の南側の海岸であることが分かります。Google Earthで見れば分かるように、大延坪島と小延坪島(ソヨンピョンド)は島の周囲が巨大な浅瀬になっています。大延坪島には、浅瀬が細長い陸地になっている部分があり、それは南側の海岸だけに存在します。映像を見ると、海の上にそうした陸地があるのが分かります。よって、北朝鮮はこの辺にある韓国軍の施設を狙って砲撃したと考えてよいことになります。朝鮮日報の記事によると、韓国軍のK9自走砲部隊が狙われたとのことです。韓国軍が80発を撃ち返したというのは、当然、この部隊が行った可能性があります。レーダーにより、発砲した場所はすぐに特定できますから、そこに向けて撃ち込んだのでしょう。大延坪島から北朝鮮の領土までは十数km程度です。自走砲なら大して難しい距離ではありません。
多分、映像に映っていたのは、港から500m位北東に行ったところの海岸付近と思われます。海岸付近の建物が軍施設のようにも見えますが、はっきりとは分かりません。
他に、大延坪島には特徴的な人造地形があります。広く切り開かれた場所が何カ所もあり、それらが道路でつながっています。近くに建物がある場所もあります。これが自走砲の砲座なのかも知れません。攻撃された場所の詳細は、これから詳しいことが報じられるでしょう。
北朝鮮軍は事前に分かっていた基地の位置に向けて砲撃したのですが、着弾を確認する工作員が大延坪島にいて、砲弾を誘導した可能性はあります。無線機を使わなくても、いまなら携帯電話でそういう通信が可能です。これは着弾を詳細に分析すれば、後の着弾の砲が正確に着弾しているようなら、そう認定できます。
午後7時のNHKニュースで、静岡県立大学の教授(氏名はメモし損ねました)が装備不良のための誤射を一つの可能性にあげていましたが、着弾時の映像を見る限り、着弾の間隔が長いので、多数のミサイルを短時間で発射する多連装式ロケットランチャーではないことが分かります。榴弾砲が使われたと考えるのが妥当で、ここから誤射はあり得ないことが分かります。砲撃は1時間あまりにわたって断続的に行われました。榴弾砲は何度も砲弾の装填と発射動作を繰り返さないとなりません。多連装式ロケットランチャーならば、実弾を用いた演習中に誤って発射されたという言い訳は可能でしょうが、榴弾砲は意図的に発砲を繰り返さないと誤射は起こらないのです。強いて言うなら、榴弾砲は砲を向ける方位と仰角によって照準し、砲手は直接目標を見ることのない遠方を撃ちます。だから狙いをつけ間違えたのに気がつかずに発砲を繰り返したということは可能でしょう。しかし、これを言えば、世界中の軍隊の笑い者でしょう。軍部の暴走もあり得ません。北朝鮮最高指導部からの命令がなければ、こんな行動は行えません。
今日、韓国軍は現場付近の海域で軍事演習を行っていますが、これは通常の演習です。北朝鮮は声明を発表して、韓国軍が領域内に射撃をしたので撃ち返したとしていますが、これは明らかに口実です。先日発覚した北朝鮮のウラン濃縮に対して、アメリカは「悪行に見返りは与えない」との方針を発表しました。ウラン濃縮の発表は明らかに、新たな恫喝外交の始まりです。北朝鮮は軽水炉の建設をリークした直後に、ジークフリート・ヘッカーらのアメリカの専門家を招き、意図的に遠心分離器2000基を並べたとする施設を見せました。研究者に窓越しに見せた遠心分離器は本物かどうかも分かりませんし、本当に2000基あるのかも確認されていません。専門家を騙すのは、嘘を本当らしく見せるための基本テクニックです。これらは新たな援助を呼び寄せるための餌に過ぎません。しかし、アメリカも韓国も、この北朝鮮の捨て身の演技を無視しました。そこで韓国軍の軍事演習を口実に、砲撃によって韓国に圧力をかけたのです。今後、様々な理由がメディアに流れるでしょうが、基本的な動機はこれ以外に考えられません。