一昨日の夜、尖閣諸島での中国漁船衝突事件に関し、海上保安庁が撮影したビデオ映像がインターネットに流出した事件が起こりました。様々な意見がメディアに流れていますが、先走った意見もみられます。
たとえば、菅内閣のやり方に憤った政府内部の者がやったとする意見があります。海保か検察の誰かという見方ですが、現在のところ流出した経緯は分かっていません。一部に検察には渡っていないビデオだから、海保から漏れたと断言するアナリストもいました。私はこの方の意見は不正確な場合が多いと、以前から感じています。その後の報道で、編集内容からして、石垣海上保安部が那覇地検に提出したビデオと同一とする見方が浮上しました。これなら海保と検察の両方の可能性があることになります。また、事件直後に現場の艦船から東京へ衛星回線を通じて送られたビデオではないとすれば、伝送中に奪われた可能性はなくなることになります。
いずれにしても、まだ流出経緯は不明なのです。政府関係者の内部告発だとする意見は、実質的には菅内閣を批判するための材料とされている場合もあり、私は信頼できないと考えています。こうした事件が起きた場合、想像を膨らませるのではなく、事実関係を厳密に切り分けていくべきです。
政府関係者の内部告発だとしても、そういう考えを持つ人物なら、ビデオを公開した後の余波も想定できるはずです。日本に不利に働くことも考えるなら、愛国心から単純に映像を公開する決断はしないとも考えられます。また最近、警察からテロ関係の情報がインターネットに流出する事件が起きています。これらを合わせれば、ハッカーが政府関係の情報を集中的に収集しており、手に入ったものを漏洩させた可能性だってあるのです。海保が編集のためにパソコンにビデオをダウンロードしたのがハッキングされた可能性を含め、あらゆる可能性を考えるべきです。単に動機の面だけから考えれば、一番怪しいのは容疑者の船長を釈放するよう政府から強要された那覇地検ということになってしまいます。海保や地検のデータ保安の方法は、当然、機密情報です。よって、報道でもごく一部しか説明されていないわけで、部外者のメディアや我々は安直に判断できません。また最近、military.comで、北朝鮮が韓国のコンピュータに大量にハッキングしているという報道もなされています(記事はこちら)。
韓国はG20首脳会合の開催を控えており、北朝鮮はそれに関するマイナーな情報を収集しているとされます。北朝鮮が韓国とアメリカのネットワークから情報を収集し、サーバを停止させる試みを行っていることは知られており、約1,000人のハッカーがいるとされます。
もちろん、私は北朝鮮が真犯人であると言う気はありませんし、何らかの証拠を持っているわけではありません。漏洩した犯人を称賛して、あとで外国の情報機関だったと分かった場合のダメージを考えるべきだということです。最近の報道は、特に安全保障の部門では、先走った報道が増えていることに危機感を感じます。テポドン2号の打ち上げの際に、これが巡航ミサイルだというとんでもない意見を主張した自称専門家もいます。大きな事件が起きるときは、必ずデマも流れると考え、情報の切り分けに集中すべきなのです。少なくとも、昨日夕方までの報道を見る限り、元海保関係者を除くと、関心を惹く意見を述べた方はほとんどいませんでした。