聯合ニュースが、韓国の国家安保戦略研究所が年次報告書で、来年には北朝鮮が延坪島など黄海5島(西海5島とも書きます)に直接侵攻する可能性があると予想しました。
この報告書は「来年に3回目の核実験が実施される可能性は外せない」「強盛大国建設を1年後に控え、費用を調達するため、さまざまな措置を断行すると見込まれるが、1年以内の具体的な成果は期待し難く、2012年に強盛大国を作り上げるという目標は達成できない」などとしています。
11月に中央日報は、今年1月に金正日総書記が「5島を地図から無くす方法を考えよ」と、黄海5島を占領するための訓練を指示し、実際に訓練が行われたと報じています。
黄海5島は、大延坪島(テヨンピョンド)、小延坪島(ソヨンピョンド)、白翎島(ペンニョンド)、大青島(デチョンド)、小青島(ソチョンド)から成ります。
私は黄海5島への着上陸侵攻はないだろうと思います。小島に上陸しても、増援を送りにくいので維持するのが難しく、最終的に手放すことになるからです。北朝鮮軍にできるのは、彼らが特殊部隊と称する歩兵を上陸させるだけです。白翎島には4,000人規模の海兵隊第6旅団が駐屯しています。北朝鮮がこれを凌駕するだけの兵力を上陸させられるとは思えません。
韓国空軍だけでなく、横須賀から空母ジョージ・ワシントン空母打撃群が出てきて、強力な火力を上陸部隊に浴びせ、韓国海軍と共に海上を封鎖するでしょう。気になるのは、北朝鮮軍の潜水艦です。近海でなら力を発揮できる潜水艦が多数あり、これがこの地域に進出してきた米韓の艦隊に群がって特攻をかけることでしょう。これによって空母が撃沈されるようなことがあれば、北朝鮮はあまり自信のない航空機を出してくるかも知れません。
韓国軍と米軍は北朝鮮軍の攻撃の起点と関連施設も攻撃します。攻撃を行っていると考えられる軍事基地だけでなく、追加の上陸を防止するために港湾や橋などの交通施設、燃料貯蔵施設なども破壊します。黄海沿岸の北朝鮮軍は大半が破壊され、他地域から移動させなければならなくなります。
金正日の命令は黄海5島を地図上から消すことでした。つまり、黄海5島を北朝鮮領とするという意味です。それから約10ヶ月間の準備を経て、北朝鮮が実行できたのがロケット砲による砲撃だったとすれば、本来の狙いが失せるほど攻撃の規模を縮小したことになります。なんとか形だけでも将軍様の命令を年内に実行するため、何かと忙しい師走は避け、11月に砲撃だけ実行したと解釈することも可能です。そもそも、このような指示を金正日が出したこと自体が疑問です。考えられるのは瀬戸際政策のためだったということだけです。こうした目的と手段が合致しない戦いは、古来から成功に結びつかないとされています。
天安撃沈や延坪島砲撃のような単発の攻撃における力と、組織的な戦闘における力は単純には比較できません。今年起きた2度の事件で常に韓国軍が一方的にやられたように見えるとしても、それはうわべしか見ない評価に過ぎません。大規模な戦闘における力は、戦闘を継続する能力によって決まるので、韓国軍の方が圧倒的に大きいのです。
政府の報告書はどんなに小さな脅威も書くもので、また北朝鮮に対して警戒していることを示すためもあり、こうした文言が含められたのだと考えます。また、北朝鮮は同じような手を繰り返し使うことはなく、別の手段で挑発することを考えるはずです。
韓国側の対応がどんなものかが気になっています。
大延坪島は大規模部隊の上陸が可能な海岸にはすべて、上陸用の船が侵入できないようにコンクリート製の障害物があります。他の島はGoogle Earthの衛星写真の解像度が低く、どれだけの防御施設があるかは分かりません。しかし、白翎島の南東部にある大豆石(コントル)の海水浴場は「360Cities」のパノラマ写真が設定されています。ここは景観の美しい浜辺で、障害物は一切ありません。写真を見る限りでは、沖合にも障害物はないようです。こうした場所は船艇で着上陸侵攻が可能です。なぜ、韓国がここに大延坪島のような防御施設を設けないのかは不明です。面積からしても、占領する価値がありそうなのは白翎島くらいで、ここの防御が手薄に見えるのは問題です。第6海兵旅団がどんな防御法を考えているのかが知りたいところです。
朝鮮戦争の戦例を考えると、北朝鮮軍による着上陸侵攻は、再び住民を巻き込んだ悲惨な戦闘になります。白翎島の人口は約4,700人で、一度に脱出させるのは無理です。島からの非難は訓練通りに行かないと思っていた方が無難です。北朝鮮が島を占領するのは無理でも、戦闘になれば大変な事態になるのです。