military.comによれば、米陸軍はブラッドレー・マニング上等兵(Pfc. Bradley Manning)がどのようにして大量の外交電報をダウンロードして「WikiLeaks」に渡したか、他の兵士がこの事件で刑事告発されるかどうかを調査中です(元記事はMcClatchy Newspapers 記事はこちら)。
陸軍はこの調査を認めましたが、詳細は明らかにしていません。調査に詳しい陸軍当局者によれば、マニング上等兵がどのように任務を与えられ、彼の上司が彼が読む必要のない書類をダウンロードした兆候を見逃したかについて報告書を完成させるため、6人のタスクフォースが2月1日まで時間を与えられています。この報告書は陸軍が政府の書類にアクセスする方法を変えるかも知れません。こうした調査は2年間で2回目です。1回目は2009年のフォート・フッド基地での乱射事件で、この調査は陸軍の数十の手順を変更させました。
2009年〜2010年初期にマニング上等兵が何十万件もの機密書類をダウンロードしたとされる時、彼はバグダッドで情報の専門家として働いていました。この情報がどのようにWikiLeaksに届いたのかは明らかではありません。マニングは彼がファイルをコピーしてコンピュータのCDドライブが騒音を立てているのを説明するために、レディ・ガガ(Lady Gaga)の音楽をヘッドフォンで聴くふりをして書類をダウンロードしたとされています。
彼は禁固52年となる起訴により、クァンティコの海兵隊基地で独居房に監禁されています。一部の人権団体は、マニングが運動をしたりニュースを読んだりできず、虐待されていると主張しますが、国防総省は主張を否定しています。
フォート・レヴェンワースの陸軍指揮幕僚大学(the Army General Command and Staff College)の指揮官、ロバート・キャスレン・Jr.中将(Lt. Gen. Robert Caslen Jr.)がジョン・マクヒュー陸軍長官(John McHugh)から命じられた研究を指揮しています。
マニングがどうやって情報の専門家になったかは鍵となる疑問です。
米政府には、秘密(confidential)、機密(secret)、極秘(top secret)の3種類の秘密書類があり、各軍は任務により兵士がどれだけアクセスするかを決定します。「将校は通常、秘密情報の取り扱い許可を持っていますが、下士卒は全員がそうではありません。下士卒の秘密取り扱い許可は専門職や特別な地位の必要性により決定されます」と陸軍広報官は言いました。一部の兵士は除隊後に許可を復活させられ、政府当局のために働く民間請負業者に彼らを惹きつけるので、秘密情報へのアクセスは金になり得ます。2009年の米政府説明責任局の報告書によると、1990年代の300万人から下落し、約240万人が秘密取り扱い許可を持ちます。この下落は陸軍が20ヶ師団から10ヶ師団へ規模を縮小したことを反映しています。
WikiLeaksが1966年に遡る政府の機密書類を公開し始めた時から、国務省は国防総省の「秘密インターネット・プロトコル・ルーター・ネットワーク(SIPRNet)」からケーブルを取り外し、ホワイトハウスは関係部署に情報を保護するよりよい方法を探すよう命じました。
マニングはいまは調査官と協力していないとされ、国防総省当局者は最新で、現在では数ヶ月遅れの情報によると、マニングとWikiLeaksのジュリアン・アサンジ氏の間に直接的なつながりは確立されていないと言いました。
マニング上等兵への容疑がどれくらい解明されているのか、ずっと疑問に思ってきましたが、やはり十分には解明されていないようです。
日本ではすでに報じられることもなくなっているマニング上等兵の名前ですが、実は事件の詳細はまだ分かっていないのです。国内報道の最大の欠点は、十分に真相が解明されないうちに、一定回数事件が報じられると、すでにすべてが解明されたかのように認識され、事実関係がないがしろになることです。
延坪島砲撃事件がその典型で、大勢のマスコミが同島へ押しかけたにも関わらず、Stratforが報告書を出したり、私がGoogle Earthで被害状況を確認しないと、どこに砲弾が落ちたのかは分かりませんでした。多くの報道機関は北朝鮮の狙いが民間人の虐殺にあったかのような報道に傾いていきました。「北朝鮮は悪い国なのだから、それでよいではないか」では、あまりにも考え方が怠惰というものです。
240万人もが秘密情報にアクセスできるのなら、マニングの他に大量にデータをダウンローした者がいたかどうかは確認できていないのではないかと想像します。マニングのネットワークの利用状況を見て、尋常ではない量のデータをダウンロードしていると知り、犯人と断定しているだけだと思われます。他に似たようなことをした者が誰1人いないという確証はおそらく、誰も持っていないでしょう。米政府がマニングと司法取引をしようとしているという報道は、証拠がないことの裏返しのように思われます。マニングに罪を軽くすると約束し、WikiLeaksを裏切らせようとしているわけです。
複数の者が手分けして、目立たないようにダウンロードを行い、まとめてWikiLeaksに渡したと考えることも可能です。これが真相なら、話はまったく異なってきます。ブッシュ政権のイラク政策に反発する国務省職員が多かったことを考えると、真犯人は国務省内にいる可能性も言うことができます。結局、事件はまだ闇の中なのです。