北朝鮮の再砲撃はあるか?

2010.12.6

 military.comが、高まった緊張に関わらず南北朝鮮共に全面的な戦争を避けるという専門家の意見を報じています。

 ソウルのヨンセイ大学のジョン・デルリィ教授(John Delury)は次のように言いました。

韓国はタフで堅固であると強調することでもう一つの攻撃を抑止するテキストブックを用いています。しかし、韓国がもう一つの攻撃にどう対処するかを予測するのは難しく、この国は常に自制を指示して判断を誤ります。私は、彼らが再び我々を突くなという明確なシグナルを北朝鮮に送ろうとしていると考えます。弱すぎた初期対応への批判のため、結局、人々はもう一つの実戦を望まないと考えないと考えます。戦略は、もう一つの事件を防ぐために、サーベルを少しガチャガチャと鳴らすことだと思います。

 「反抗的な失敗国家 国際社会への北朝鮮の脅威(Defiant Failed State: The North Korean Threat to International Security)」の著者で、テキサス州のアンジェロ州立大学(Angelo State University)の客員教授ブルース・ベチトル(Bruce Bechtol)は次のように言いました。

確実に可能性はあるものの、私は韓国と同じく、北朝鮮が望むのは、それを阻止することだと考えます。北朝鮮はいつも、拡大しそうにない、阻止できる小さな奇襲を行います。


 専門家の意見を聞かなくても、まともな考えをする人なら、北朝鮮が突然全面戦争をはじめるとは考えません。

 全面戦争となると、それを戦い抜くだけの防衛資産を北朝鮮は持っていないとみられていますし、中国は北朝鮮を、アメリカは韓国を支援して対立します。いずれも交渉の余地のない退けない戦いなので、最後まで止められませんし、勝ち負けいずれにしても、将来の互いの関係に修復しがたい傷をもたらすかも知れません。いずれの大国も、そういう事態を望んでいません。すでに米中は経済的なつながりを深め、簡単に決裂できる間柄ではないからです。短期間の関係悪化ならともかく、長期間の途絶はお互いにかなりの損害を伴うのです。北朝鮮は中国のそういう意図を理解しています。

 北朝鮮が再砲撃の態勢を継続しているのは、韓国への圧力であり、北朝鮮軍を緊張させたままにするためです。警戒態勢を命じられたロケット砲部隊は、いまでも準戦時体制で勤務を続けているはずです。彼らは、韓国が不法にわが領土を砲撃したから反撃しろと命じられ、再度の砲撃に対して再び攻撃を行うために待機しているのです。北朝鮮軍兵士は上官の説明を真実と考え、命懸けで勤務に就いているわけです。ついていけない者には鉄拳制裁が加えられるでしょう。

 今日から、韓国が大青島(kmzファイルはこちら)など北方限界線(NLL)を含む29ヶ所で砲撃演習を再開します。金永日労働党書記が2日、カンボジアで開かれた「アジア政党国際会議第6回総会」で、北方限界線について「われわれはそれを認めたこともないし、これからも永遠に認めない」と述べました。通常の国際紛争なら、こういう理由があれば、韓国が砲撃を再開したら、北朝鮮は再び砲撃を行います。しかし、私は北朝鮮は当面、砲撃を行わないと考えます。ベチトル教授が言うように北朝鮮は「拡大しそうにない、阻止できる小さな奇襲」しか行いません。全面戦争をする体力はないからです。彼らは我々と一緒にダンスを踊るつもりはありません。むしろ、彼らは我々が調子を崩すようなことをするのが得意です。

 特に、いまは韓国が再攻撃に神経をとがらせ、強い反撃をすると宣言しています。再砲撃すれば韓国は激しい砲爆撃を行い、北朝鮮は大きすぎる損害を受けるでしょう。そうなると、北朝鮮は再反撃を行い、韓国がやり返すという応酬が続きます。どちらかが止めるまで続くことになりますが、これは北朝鮮には言い出しにくいことです。

 また、似たようなことを繰り返しても、国家レベルでは効果的な脅しにはならないので、次は違うことを考えるはずです。短期的には核実験、ミサイルの打ち上げ実験、プルトニウム産出のために軽水炉建設の促進、ウラン濃縮が進展したとアピールすることを繰り返すと考えられます。テポドン2号は冬季の天候悪化で打ち上げられませんが、春になったら敢行するかも知れません。前回の打ち上げが4月初旬だったことを思い出してください。

 北朝鮮問題を解決するには、北朝鮮内部からの崩壊を待つしかないと思われます。唯一のチャンスは3代目の金正恩への権力継承が失敗することです。「金持ちは3代で滅ぶ」というように、2代目までは部下たちの忠誠心を維持できても、3代目はそれに失敗します。北朝鮮の経済がうまく回ったのは最初の内で、その後は悪化する一方です。3代目に対する風当たりは強くなります。正恩の利点は祖父、金日成の若い頃にそっくりだということです。金正日は映画を使って国民を統治する方法を選びましたが、正恩は祖父を思い起こさせることで国民を統率しようとするでしょう。しかし、これは威信としては、やや弱いのです。

 北朝鮮が中国に併合される道を選ぶ可能性はないでしょう。民族性が違いすぎて、同じ政府を持つのは困難です。そうなれば、頼りになるのはやはり同じ民族である韓国です。今後、韓国は経済制裁をより厳しくしますが、それに乗じて、内部崩壊をもたらすような工作も必要です。当然、中国の支援も制限する外交交渉も必要です。

 長期的には北朝鮮が本格的な核兵器を持つ前に、崩壊をもたらすことが重要です。日本も当然、それに協力すべきです。



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