military.comによれば、警察や軍の制服を販売・製造する店とテーラーを取り締まっています。自爆テロ犯が治安部隊に変装して検問所をすり抜けたり、爆弾を運搬するのに、これらから制服を手に入れるためです。
ここ数ヶ月、政府ビルやホテルの爆破を許した保安のミスは、来月議会選挙を行うイラク政府を困惑させ、できるだけ多くの穴を塞ぐ必要に迫られています。制服は青空市場で広く入手でき、多くのテーラーはそれらを作っています。治安部隊はすべての隊員に制服を供給できないために問題は悪化する一方で、兵士や警官は制服を買うために、しばしば市場に出向かなければなりません。前月以来、イラク当局は何百人もの市場の販売人とテーラーに有効なIDカードと公文書を示す合法的な保安部隊員以外のために、制服を製造・販売しないという誓約書に署名するよう命令しました。違反した者は商売は廃業、投獄される可能性があると、国防相の広報官モハメッド・アル・アスカリ少将(Maj. Gen. Mohammed al-Askari)は述べました。しかし、治安部隊の身分証明書はあまりにも簡単に作れるので、米軍は何ヶ月も警察官と兵士を特定するよい方法を開発するよう、イラクに要請していました。バグダッドの警察大学でイラク人と共に働く米軍の軍事顧問、シルヴェスター・ウェグウー少佐(Maj. Sylvester O. Wegwu)は、イラク軍は攻撃者らしい者を見たとき、制服ではなく、疑わしい振る舞いに注目するといいます。「ほとんどの警察や軍の制服は模倣するのが簡単なので、保安軍は地域に近づこうとしている個人についてほとんど口にしません」。内務省と国防省配下の警察、軍の様々な部署で、沢山のスタイルの制服があり、それぞれに独自の記章とデザインの必要条件があります。これにはパイプラインや施設を防衛する石油省の部隊は別です。武装勢力はボディチェックを回避するために、制服を着て変装してきました。2006年には古い制服が武装勢力、暗殺団、一般の犯罪者によって複製された後で、米軍がイラクの連邦警察の制服をデザインし直したほど問題は大きくなりました。変装は再び増加しています。昨年8月、10月、12月、今年1月に、数百人を殺してバグダッドに打撃を与えた一連の自爆トラック事件は、政府の施設や西欧人が頻繁に使用するホテルを狙いました。保安担当者は、攻撃者の何人かが検問所を通り抜けるために警察や軍に変装したと言います。
テーラーと小売店主は新しい規則が機能するか疑っています。テロリストは生地を買って、それを民間人の衣類を縫うテーラーに与えることができると、縫製店の店主ハッサン・チャラブはいいました。最近は、一般人さえ流行にのってカモフラージュ服を着るので、そのような規則をテーラーに強いるのは難しい、と彼は言います。制服を作るテーラーのサバー・アル=ケイヤットは、疑わしかったとか、適切な書類を提示できなかった来客者を締め出したと言います。「ある日、男が米陸軍が着ているのに似た軍服を縫うように依頼しました。私は彼が疑わしく見えたので、彼のためになにもしないことに決めました」。警察で働くムスタファ・カミルは「私はバグダッドの4つのエリアにある軍服を売る店すべてを回りましたが、誰も私にIDカードを提示するように求めませんでした。テロリストは簡単にこれらの店で戦闘部隊の制服を買い、イラクのどの家にもあるライフル銃や拳銃を手に入れ、保安当局のメンバーのふりをします」と言いました。カミルのような警察官は、内務省が制服を供給すると約束しているにも関わらず、自分で制服を買うよう強いられています。制服とブーツは215ドルで、約340ドルの彼の月給の大半を吸い上げます。内務省と国防省はすべての隊員に制服を供給できていません。理由の1つはほとんどの制服を製造する工場がイラク南部に1カ所しかないからです。イラクの緊縮財政は増産計画を遅らせています。
この記事を読むと、「まだこんな基本的な問題すら解決できないのか」と暗澹とした気分になります。イラクの戦いが始まって8年以上が経過するにに、これでは話になりません。武装勢力が軍服で変装するのは、以前から言われていることです。制服のデザインを一新して、製造を厳重に管理し、制服が外部に出ないようにするしか手がありません。それ以前に、イラク政府が制服を供給できないのが問題です。また、武器が家庭にあるのが当たり前という点も問題です。アメリカにも武器を置いている家は多いのですが、これらは一定の規則に従う必要があります。スポーツ用に所持している人が多く、自衛の場合に用いる場合でも、自宅の敷地外で使用することは禁じられています。しかし、イラクの場合、地域社会のために武器を用いることが許されており、アメリカとは環境がまた違います。こうした社会環境の違いも、戦争を始める前に、十分に考えておく必要があるということです。アメリカは常に敵を正規軍としてみなし、正規軍相手の戦いを考えてきましたが、これからの戦いは、敵を「軍隊」という枠でくくり、軍隊を倒すための戦略・戦術を考えるだけでは不十分です。相手の社会環境全体を考察し、当然起こると予測される問題を重視し、その上で勝利が得られるかどうかを検討し、それから結論を出すべきということになります。一口で言えば、孫子の「敵を知り、己を知れば、百選危うからず」という、古い思想と変わるところがありませんが、これは割と意識されて来なかったことです。ゲリラ相手の戦争は、すでに何度も同じ失敗が繰り返されてきたことです。もう失敗を繰り返すべきではありません。なにより、ゲリラ戦が起きる原因を根絶することも考えていくべきです。