ソマリアの海賊の「母船」を狙え!

2010.3.10


 military.comによると、欧州連合(EU)の海軍は、ソマリア沖の海賊を単に貨物船を守るのではなく、彼らの補給船を沈めることで活動を中断させようとしています。

 ソマリアの海賊は、弾薬、燃料、食物を積んだ「母船」を使い、より遠くの海で活動し、頻繁に使用される航行ルートで船舶を攻撃しています。海賊はしばしば、母船を中継基地として使い、1〜2隻の小型のスキフが船を攻撃します。当局が海賊行為の十分な証拠があれば、拘束し、起訴するためにケニヤやセイシェルへ移送します。十分な証拠がない場合、EUは母船とスキフを破壊しますが、ソマリアへ戻る方法を残します。「チャタム・ハウス(Chatham House)」の別名を持つ王立国際問題研究所(the Royal Institute of International Affairs)のロジャー・ミドルトン(Roger Middleton)は、この戦術が効果的だといいます。「インド洋での攻撃は母船に依存しており、個々の攻撃に対応しようとするよりはより成功しそうです」。

 記事のその他の記述は省略します。重要なのは、海賊が母船を使っているという事実です。彼らにとっては、攻撃範囲を広げるための工夫が、実は弱点だということです。なぜ、今ごろこのことが言われるのかが口惜しい気がします。海賊が組織的に母船を活用していることは、かなり前から分かっていたはずで、対応策として最初に出てくるべきことでした。これこそ海軍の基本的戦術というべきです。

 母船がいそうな海域を重点的にパトロールして、不審な船(漁をしているわけでもないのに停泊している船など)を見つけたら、臨検を行うのです。海賊ならば、当然、弾薬を積んでいたり、乗組員分にしては多すぎる食糧、補給しやすいように小分けされた燃料缶などが見つかるはずです。証拠がない場合でも船を破壊するのは法の原則に反するように思えますが、この場合の十分な証拠がないというのは、彼らに捕まった人質がいないが、不審で余計な積荷を積んでいるような場合を指すのだと考えられます。海賊行為は実行しなかったが、その途上にある者を指すのだと考えられます。遠洋まで、用もないのに出てくる者はいないわけですから、そんなところで目的がはっきりしない航海をしている船があれば、すでに容疑をかけられるものなのです。まともな船なら、航海の目的などを説明できるようにしているものです。母船が反撃してきたら、これは海賊だと自供しているようなものですから、反撃して沈没することになります。こうした点は、陸上生活の場合とは、ルールがまったく違います。母船の攻撃に成功すれば、海賊はごく近海でしか活動できなくなり、成功率はかなり低くなるはずです。


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