ロシアがアフガンの麻薬対策で不満表明

2010.3.13


 military.comによれば、ロシアのNATO特使ドミトリー・ロゴツィン(Dmitry Rogozin)が、同盟国がアフガニスタンで麻薬密売と戦っておらず、その結果ロシアの安全を脅かしていると批判しました。

 ロゴツィン特使は、NATO内部の結合の欠如を取り上げ、戦争への支持がヨーロッパで減っていることに懸念を表明しました。「ロシアはアフガンの麻薬

取引によって30,000人が死亡し、100万人が中毒者です。これは我が国に対する宣戦布告なき戦争です。我々は、この問題に対する我々の不満にNATOとアメリカが注意を払わないことが、まったく不満です」。ロシアはアフガンでの麻薬生産高が2001年にアメリカが進入してタリバンを追い出して以来、10倍に増加したと言います。ロゴツィン特使は、アメリカが主要な麻薬の輸入ルートであるコロンビアに対する態度と、アフガンに対するそれが、あまりにも違うと批判しました。「ロシアへ行くヘロインの場合、彼らはほとんどなにもしていません。これは友人やパートナーに対するやり方ではありません」。NATO広報官はロシアの懸念を理解する一方で、武装勢力と戦うことが麻薬取引を防ぐことだと説明しました。ロシアは国際部隊への補給品を輸送するために、重要な地上と航空の交通回廊を提供し、ヘリコプターを提供し、薬物を取り締まるアフガン警察の訓練を行っていますが、地上軍を送ることは避けています。

 ロシアが地上軍を送らないのは、かつてアフガンに侵攻して大敗したからで、国民の理解を得られないのが理由です。アフガンの側もロシア軍が来ることを望まないでしょうし、アルカイダに攻撃材料を与えるだけです。しかし、マルジャ戦が終わり、今年の夏に予定されるカンダハル戦を控える段階で、こうした批判をするべきとは思えません。今のところ、アフガン南部からタリバンを追い出すことくらいしかできることはありません。それよりも、2001年以降に、アフガンでの麻薬栽培が急増した原因を知りたいところです。タリバンが活動を続けるために、積極的にロシアに出荷するためとか、近隣諸国で大量に買ってくれる犯罪組織があるのはロシアくらいといった理由が考えられますが、ロシアの国内事情も知りたいと感じます。

 すると、日本がインド洋で麻薬対策などのために洋上給油を行ったのはなんのためだったかという疑問が改めて浮かんできます。外務省のウェブサイト「わかる!国際情勢」は「アフガニスタンとインド洋での「テロとの闘い」について、次のように説明しています(該当ページはこちら) 。


テロとの闘い」に立ち上がった国々が、一致団結して行っているのが、アフガニスタンとその周辺、そしてインド洋上でのテロ対策活動です。アフガニスタンとその周辺は、アル・カイダをはじめとするテロリストがその拠点としている地域です。インド洋は、テロリストが移動したり、その資金源となる武器や麻薬を輸送する海域です。このため、各国は、国際治安支援部隊(ISAF)、地方復興チーム(PRT)、不朽の自由作戦(OEF)といったアフガニスタン本土での活動やインド洋での海上阻止活動に対して、多くの部隊を派遣してテロとの闘いに取り組んでいます。

 武器や麻薬は第一に陸続きで輸送され、海路を運ばれるものは少ないという予想は以前からありました。しかし、ロゴツィン特使が述べたほど極端な数字があるとは想像しませんでした。これほどの被害が出ているのなら、もっと早くに言って欲しかったと思います。海上自衛隊が洋上給油を行ったのは、現行の憲法を拡大解釈すればなんとか国会を通せるからで、上記のような国の説明は「後づけの理由」に過ぎません。また、問題はこれだけに留まりません。一端、こうしたやり方で話が通ると、あとで形をちょっと変えるなどして「使い回し」されるのが常です。インド洋沖の洋上給油も、昨年秋に、ソマリア沖で対海賊で活動中の艦船への洋上給油へ切り替えるという案が浮上したことがありました。採用されなかったものの、北沢防衛大臣は一度はこの案に乗りかかりました。このように、一度確立した理屈は、あとで化粧直しをして、使い回されるのです。だから、政府の発言を鵜呑みにせず、まず軍事的に状況を分析することが大事です。

 さらに、薬物治療に関する記事がmilitary.comで報じられています。トラウマの治療のために、モルヒネ投与を受けた負傷兵はモルヒネ投与を受けない負傷兵よりも半分程度、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を改善することが、米海軍の研究で明らかになりました。この研究は、負傷直後のモルヒネ使用と早期のトラウマ治療がPTSDの危険を減らすことを見出しました。研究者は海兵隊と海軍の医療データベースから696人の事例を調査しました。このデータでは、243人がPTSDと診断され、残り453人はPTSDではありませんでした。PTSDの診断を受けた患者の内、モルヒネを投与された者は61%で、PTSDでない患者では76%でした。研究者の1人、トロイ・ホルブルック(Troy Holbrook)は「これは重傷の後、トラウマの治療、蘇生の間にモルヒネを投与された患者はモルヒネを投与されなかった患者よりも半分程度PTSDを改善すると解釈できる」と述べました。

 PTSD患者とそうでない者は同程度がモルヒネ投与を受けており、PTSD患者はそうでない患者よりも人数が半分程度ということですから、確かに効果はあるようです。研究はまだ進行中です。モルヒネが激痛を緩和することが理由の1つでしょうが、今後はその効果のシステムが解明されるべきです。

 ところで、3月にアメリカの大手ケーブルテレビ会社「ホーム・ボックス・オフィス」が「The Pacific」というテレビドラマを放送します。第2次世界大戦の太平洋戦線での海兵隊戦記ドラマで、「バンド・オブ・ブラザース」の太平洋版というところです。トム・ハンクスやスティーブン・スピルバーグがエグゼクティブ・プロデューサーに名前を連ねています。どのような作品なのか、内容が気になるところです。公式サイトでは、予告編やメイキング映像が見られます。(公式サイトはこちら

 


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